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閉店を控える百貨店、「三田阪急」は今どうなっているのか。【2021/8/1閉店】

近年、百貨店の閉店が相次いでいる。週刊ダイヤモンドによると、2020年1月から8月までのわずか8か月間に全国で12店舗が閉店しているというデータが公開されており、百貨店市場全体が縮小傾向にあることを考えると、いくらインバウンド需要がこれから復活するだろうとはいえ、百貨店市場の将来が明るいとはお世辞にも言えないのが現状だ。

百貨店市場額

そんな苦しい状況にある百貨店業界だが、2021年の8月、兵庫県にまた1つ、その灯火を消そうとしている百貨店がある。三田阪急だ。今回は、この三田阪急について、閉店を約半年後に控える今(訪問したのは2021年3月、記事執筆は2021年4月)、どういう状況にあったのか、そして周辺の状況はどうなっているのかについて書いていこうと思う。

バブルと再開発の波に揉まれた三田阪急

三田阪急は、大阪からJRの快速電車で約40分、JR・神戸電鉄の三田駅前に位置する百貨店だ。駅前にあるテナントビル「キッピーモール」の1階と2階の2フロアを阪急側が借りており、1階に系列スーパーの「阪急オアシス」、2階に百貨店の「三田阪急」が入居している。百貨店は1フロアのみという小規模なものとなっており、面積も2,000平方メートルほどと、阪急うめだ本店の80,000平方メートルや宝塚阪急の7,200平方メートルなんかと比べても非常に小さい店舗となっている。

三田阪急 フロアガイド

ところで、阪急といえばもちろんあの鉄道会社の阪急であるのだが、なぜ阪急百貨店は阪急電車の来ない三田市に出店したのだろうか。一般に鉄道系百貨店といえば、完全独立採算となっている西武百貨店を除き、自社の鉄道路線の沿線にお店を出すのが恒例となっている。また、自社の沿線外のお店であっても、ニュータウン造成や土地開発のついでといった具合に、何かしら自社に関連がある場所にお店を出すのが一般的な考えだ(この例として、JR住道駅前の京阪百貨店が挙げられる)。しかし、三田阪急にはそのような「絡み」が一切存在しない。いったい阪急はなぜ、三田という場所に百貨店を出したのだろうか。これには、「再開発」と「バブル」という2つの複雑な事情が絡んでいる。

もともと三田市は、大阪通勤圏にすら入らない、いわゆる「田舎」だった(三田市民のみなさま、ごめんなさい)。しかし、1980年代からニュータウンの造成が終わりはじめ、それと同時に福知山線(JR宝塚線)が複線電化されたことで大阪へのアクセスが格段に便利となり、人口が流入するようになった。

もともと福知山線は単線・非電化で、1980年代までディーゼル機関車が運転するという貧弱な路線でした・・・。

ニュータウンの造成、そして交通面で便利になった影響は非常に大きく、結果三田市は1987年から1996年の10年間、「人口増加率日本一」という名誉ある記録まで打ち出してしまった。結局みんな都会に住みたいんですね・・・まあ私もそうなので文句は言えませんが。

三田駅

そんな三田市だが、やはり光があれば影があるというものだ。人口増加には成功したものの、それとともに三田駅が手狭になってしまったのだ。その結果、三田駅周辺が再開発されることになったのだが、それと同時に、今の三田阪急が入居するビル、通称「キッピーモール」(当時からそう呼んでいたのかどうかは分からないが)が作られることになったのだ。

そして驚いたことに、当時は阪急百貨店のライバル、「大丸」がビル全館に出店する予定だったそうだ。もし大丸が出店していたとするならば、今の須磨大丸のような構成になっていたのかもしれない。

しかし、当時はバブル景気。当然、土地の価格も上がり続けており、土地取得は難航を極めることとなってしまった。その後ようやく土地が取れたと思いきや、今度はバブルが崩壊、再開発そのものは進むことになったが、1993年、当の大丸が出店を取りやめる事態になってしまった。

これに助けを出したのが阪急百貨店。当時はまだ人口も伸び続けており、勝ち目があると考えていたのだろう。阪急側も「全館での出店」を表明するに至った。

しかし、阪急百貨店の目論みとは裏目に、人口は伸び悩むことになる。確かに人口増加率全国1位の三田市とはいえ、バブル崩壊の影響で土地価格が大きく下がり、都心回帰が進んだからだ。結果、阪急百貨店は全館への出店を取りやめ、2フロアのみの出店に変更。その後も人口が伸び悩んだことから、現在では1フロアを「スーパー」という形態で出店、百貨店としての運営は1フロアのみに留めている。

小さい割には充実した品ぞろえ

三田阪急 外観

さて、三田阪急を巡る事情についてここまで書いてきたが、ここからは実際に三田阪急がどうなっているのか、写真とともにお届けしていこう。

先ほども書いた通り、三田阪急はJR・神戸電鉄三田駅前の再開発によって生まれたショッピングモールだ。再開発の一環として生まれたこともあってか、駅に接続するペデストリアンデッキから2階フロアに直接入ることができる。この点は高評価だ。

三田キッピーモール

モールの入口にやってきた。一応「ショッピングモール」という体であることもあってか、やはり高級感漂う百貨店に比べるとやや味気ない。そして上には、「阪急オアシスは、引き続き営業いたします」との文字。どうやら阪急は完全に撤退するということはせず、百貨店事業のみを取りやめるようだ。百貨店事業と食品事業、コロナ禍での業績の差がモロに表れている格好だ。

三田阪急店内

そんな三田阪急の店内だが、さすがにそこは百貨店だ。多少のショッピングセンター要素が残っているのは仕方がないとはいえ、店内はキレイにされているし、品揃えもいかにも高級そうな品物がズラズラと並んでいる。ただ、まだ「閉店」というムードは訪問当時は漂っておらず、のんびりとした時間が流れていた。

三田阪急店内

そんな三田阪急だが、店の規模の割にはなかなかの品揃えで、婦人服はもちろん、靴やバッグ、雑貨、リビング用品など、狭い店の割には実に多種多様な商品が所狭しと並んでいる。さすがに都会のように、ブランド別にでかでかと展開されている化粧品売り場は存在しなかったものの、それでもコスメ用品に関しても多少取り扱いがあり、「広さの割にはかなり充実した品ぞろえをしている」といって良いだろう。ただ、男性向けの商品があまりなかったのは残念だと感じてしまったが。

三田阪急

こんなことを申し上げると「どうせ定番ものしかないんでしょ?」という声もいただくかもしれないが、心配ご無用。こんな個性的でかわいいグッズもちゃんと用意されている。とはいえ、数が少なくなってしまうのでご了承。やはりキャパに限界があるのは仕方ないよなぁ・・・。小さい面積をどう有効活用するのか、その努力と小さいが故の限界を見せつけられる一面でした。

阪急オアシス三田駅前店

そんな三田阪急だが、あくまでも「ショッピングセンターのテナントの1つ」として入居していることからもわかるように、センター内に他のテナントも入居している。ここからは、それらテナントの様子について見ていこう。まずは1階のスーパーから。「阪急オアシス 三田駅前店」という名前で営業しているこのスーパーだが、平日の夕方、かき入れ時に訪問したこともあってか、大盛況だった。そりゃ、阪急オアシスは潰さんわな。

キッピ―モール4F

ショッピングセンターらしく、本屋も営業している。それほど広いモールではないのだが、その割には通路が非常に広く取られており、なんとなく空虚な雰囲気を醸し出してしまっている。どうにかならないんですかねこれ・・・

キッピーモール しまむら・Avail

そして、三田阪急の1つ上の階、3階には「しまむら」と「Avail」という、二大格安衣料品店ともいえる店舗が入居している。

いや、三田阪急潰したのアンタらやろ

とツッコみたくなるような構成だが、資本主義社会だもの、仕方ないといえば仕方ないか。それにしても、1つフロアが変わるだけでこんなに安っぽい感じになってしまうあたり、やはり百貨店というものの偉大さを感じてしまう。

三田阪急

三田阪急閉店後、後継テナントが何になるのかはまだ発表されていないが、どうかこの素晴らしい雰囲気を維持できる、魅力的なテナントが入ることを願うばかりだ。

今までありがとう、そしてさようなら。さようなら・・・


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