近畿大阪府枚方市

枚方ビオルネ 倒産の憂き目を乗り越えて… 今も稼働するバブルの遺構を探索

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高度経済成長期から現在に至るまで、雨後の筍のように建てられた再開発ビル。往々にして都市部を中心に建設されることの多いこの再開発ビルだが、それが成功するかといわれるとこれはまた別の話。運営がうまくいかず、経営母体が破綻するという事例もバブルが崩壊してからというもの、全国で何度も発生しており、倒産という言葉が新聞の紙面を踊るのも珍しくなくなってしまった。

ビオルネ

今回ご紹介する「枚方ビオルネ」も、運営母体が倒産してしまった事例の一つ。京阪電車・枚方市駅から歩いて数分という恵まれた場所に位置するこのビオルネだが、その裏には「核店舗も運営会社も揃って倒産する」というなかなかに複雑な歴史をたどっている部分があり、1990年開業というその開業年もあいまってなかなかに興味深い光景が広がっているのだとか。今回は、そんな枚方市駅近隣に位置する再開発ビル「ビオルネ」について、その様子を見ていくこととする。

核店舗も運営会社も揃って倒産経験あり…「枚方ビオルネ」

ビオルネ

枚方ビオルネ(正式名称は単に「ビオルネ」)は、大阪府枚方市に位置する再開発ビル。枚方市の再開発事業「枚方岡本町地区第一種市街地再開発事業」により1990(平成2)年に開業した。ビオルネは「VIE.ORNER」と表記し、フランス語で「生活を彩る」という意味があるそうだ。

ビオルネ

ビオルネ横の公園には現在も京街道や岡本町商店街に関する展示が残る

ビオルネ

ビオルネ横の公園には現在も京街道や岡本町商店街に関する展示が残る

古くは京都-大阪を結ぶ「京街道の宿場町」として、戦後は岡本町(おかほんまち)商店街を中心とした商業地として一定の地位を築いてきた岡本町周辺エリア。当時は市内でも最も賑やかな商店街として多くの人々で賑わったのだという。

ビオルネ

ビオルネ建設時の再開発エリアの様子

ビオルネ

サティ時代のビオルネ

しかしながら、郊外における商業施設の開発等により周辺環境が大きく変化。それに対する抜本的な解決策として選定されたのが「再開発」という手法で、1983(昭和58)年に再開発組合が設立、この手の再開発としては比較的スムーズな進捗の結果、1990(平成2)年に核店舗を「サティ」とした上で開業した。

ビオルネ

当初は枚方市や地元企業等が出資する第三セクター「株式会社ビオルネ」が運営していたこのビオルネ。ところが、駅からやや離れている(駅前には「ひらかたサンプラザ」という別の再開発ビルが立地)ことや2000(平成12)年にサティを運営するマイカルが経営破綻したことにより(ちなみに、核店舗も「サティ→ビブレ→サティ」と迷走していた)、施設の求心力が大幅に低下。結果、売上の低下が続き、2010(平成22)年に株式会社ビオルネは民事再生法の手続を申請・破産手続をすることとなってしまった。これらの経緯により、ビオルネは「核店舗も運営会社も揃って倒産する」という、なかなかに不名誉な記録を打ち立ててしまった。

枚方パートナーシップス

なお、現在ビオルネの運営は「枚方パートナーシップス」という当初とは全く別の企業によって行われている模様。詳しいことはあまり分からないが、枚方市内に留まらず、直営雑貨店を岡山に開業したり、このタイプの企業としては珍しく新卒採用を実施していたり(数年間継続中)と、なかなかに攻めた経営をしている印象を持った。ここからは、そんな枚方ビオルネの現状について見ていくこととする。

バブルの面影色濃く残る内部

枚方ビオルネ

枚方ビオルネの概要と歴史について触れたところで、その内部の様子を見ていくこととする。1990年築と、既に30年以上の時間が経っているはずだが、今も全く色褪せていないのが素晴らしい。

枚方ビオルネ

枚方ビオルネ

入口をくぐると、目の前にいきなりスパイラルエスカレーターが現れる。広い吹き抜けもともに設置されており、天井のステンドグラスもあいまって非常に開放的な空間が広がっている。いかにもマイカルらしいといえばマイカルらしい。

枚方ビオルネ

展示(後述)より抜粋

枚方ビオルネ

開業当時のテーマ「宇宙」に関するギミックは現在も残る

この特徴的なステンドグラス類は枚方ビオルネ建設時に制定された「宇宙」というコンセプトから現れているもののようで、現在も館内随所にその名残を感じさせるギミックが残っている。今も残る数少ないバブルの遺構だ。

枚方ビオルネ

その他にも、サティ時代の放送が残るエスカレーターなどもいまだに健在。もはや一種の重要文化財だと思うんですが、みなさんどうでしょうか。

館内の展示が素晴らしかった件

ビオルネ

ビオルネ

建設中の斜行エレベーター

枚方ビオルネ5階には展示スペースが設置されており、その中にはビオルネに関する歴史をつづった資料が多数展示されている。1983年の「再開発組合設立」から現在に至るまでのビオルネが多数の写真とともに展示されており、非常に貴重な存在となっている。

ビオルネ

再開発前の枚方市駅周辺の空撮写真もしっかり掲載。枚方市駅前にかつて位置した近鉄百貨店(現:枚方T-SITE)には立ち退きを拒否した民家が屋上に建っているというなかなかに凄い光景が広がっていたことが有名だが、その状況がこの写真からもしっかり読み取れる。

ビオルネ

なお、展示の中にはちゃっかり「旧運営会社(株)ビオルネ倒産」という文字が記載されている。ビオルネにとっては直面したくない現実であっただろうが、こういったことを隠さずにしっかりと開示するあたり、非常に好感が持てる。建物は変わらないが、中身の大きく変わったビオルネ。今後もその「攻めた経営」で面白い体験を提供してくれることを願うばかりだ。

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