伊丹空港という名称で全国的に有名な街・兵庫県伊丹市。兵庫県下で尼崎市に次いで人口密度第2位という全国でも屈指の過密都市となっており、その影響もあってか、JR伊丹駅と阪急伊丹駅の2つの駅の周辺地区を中心に様々な再開発事業が行われてきた。
そんな伊丹市の市街地再開発事業でも特にクセの強い施設が「アリオ伊丹」である。アリオというとセブン&アイHDが展開している大型ショッピングセンターの「アリオ」を思い浮かべてしまいがちだが(実際、大阪府八尾市の「アリオ八尾」はセブン&アイHDの運営)、なんとこの施設、当のセブン&アイとは全く関係のない再開発ビルなのだという。今回は、そんな実に不思議な名称の再開発ビル「アリオ伊丹」について、その様子を見ていくこととする。
セブン&アイ関係なしの再開発 アリオ伊丹
アリオ伊丹は、兵庫県伊丹市に位置する再開発ビル。再開発事業「国鉄伊丹駅前地区第一種市街地再開発事業」によって1989(昭和64)年に開業した。なお、前述したセブン&アイHDの「アリオ」は2005年に1号店が開業しているので、実はアリオの元祖はこちらなのである。
建物はアリオ1・アリオ2・伊丹市立演劇ホール(アイホール)の3棟で構成。当初の計画では中央の道路を挟んで2棟のみ建物を作る予定だったようだが、のちに計画を変更。結果、現在の姿に至ったのだとか。ちなみにこの結果作られたホールは「関西屈指の小劇場」を自称しており、バブル期に乗じて相当良いものを作ったことがうかがえる。
アリオというその名称の由来については、当時の事業誌に以下のような記述がなされている。
JR伊丹駅前に、国指定史跡の「有岡城跡」があり、付近一帯が江戸時代「有岡」と呼ばれていた「ありおか」の上三文字をとった「アリオ」が、一番なじみやすいということになった。ほかには「アイアイタウン」「アイトピア」「伊丹ウイングタウン」などがあった。
(演劇ホール)「アイホール」は当初「あいホール」とひらがなだったが、「あい」をカタカナにすることで決まった。市では「アイ」は、伊丹の頭文字「I」であり「愛」「アート・アイデンティファイ」(文字芸術の個性や特性)にも通じるとしている。
どうやら、再開発ビルの隣接地に有岡城跡があったがゆえにこのような名称になったようだ。単純といえば単純ですね。
再開発ビルの工事中に大雨で民家が浸水したり、施設の地下埋設物に12万Vの高圧ケーブルやガス管があり、建設中に移設する必要があったなど、様々な苦難があったというこのアリオ伊丹。ここからは、そんなアリオ伊丹の現状について見ていくこととする。
イオンモールに押され中「アリオ1」
まずはメインビルであるアリオ1から。開業当初は1・2階に商業店舗が、上層階に住宅が入っていたが、現在は2階がクリニックフロアに変更となっており、商業フロアは1階のみに変更となっている。
1階の商業フロアへと入っていこう。伊丹市に本社を持つ中堅スーパーマーケット・関西スーパーが核店舗となっているほか、種々の小規模店舗が入居している。
中の店舗を見ていく。核店舗である関西スーパーはさすがに小綺麗にされており、それなりにお客さんもいる模様。しかしそれ以外の店舗となると、こちらはなかなかに厳しい状況の様子。JRの線路を挟んで向かい側に「イオンモール伊丹」が開業した影響も大きいのだろう。祝日の訪問であったが、お世辞にも流行っているとはいえない。
この状況は今に始まったものではないようで、アリオ伊丹開業当初、まだ珍しい存在として入居していた「無印良品」は早々と撤退。2階にあったエステサロンやブティック、レストランバーなども全て撤退し、現在は病院や薬局の並ぶクリニックモールへと生まれ変わっている。
しかし、この状況では明らかにジリ貧となっているのは否めないだろう。スーパーも関西スーパーだけで伊丹駅周辺に3店舗、イオン、阪急オアシス・・・ これでスーパーが消えたら本当に本当に大変なことになる気しかしないんですが、大丈夫なんですかね・・・。
何やかんやうまくやってます「アリオ2」
アリオ2の様子も見ておこう。こちらは元々の店舗数が少ないこと、住宅がメインとなっていることもあり、それなりに店舗が並んでいる。空き店舗も少なく、アリオ1よりもむしろ良い状況とさえ言えるかもしれない。
商業エリアを見ていく。住宅メインなんでこんなものでしょう。それにしてもJRの快速が停車する駅前にしてはえらい静かなんですが、イオンにお客さん取られすぎでは・・・(苦笑)