兵庫県伊丹市が阪神・淡路大震災によって非常に大きな被害を受けたのはあまりに有名な話で、阪急電車の伊丹駅の駅舎が震災とともに倒壊、駅ビルが再建して元の状態に戻るまで3年もかかったというその事実から全てが物語れるだろう。
そんな大きな被害を受けた阪急伊丹駅の駅前には「伊丹ショッピングデパート」なる再開発ビル・商業施設が立地しており、震災前から現在に至るまで変わらない姿を人々の間に見せ続けている。今回は、そんな阪急伊丹駅前の再開発ビル「伊丹ショッピングデパート」について、その歴史と現況を見ていくこととする。
震災を乗り越えて開業50年超え「伊丹ショッピングデパート」
伊丹ショッピングデパートは、阪急伊丹駅前に位置する商業施設。核テナントに「関西スーパー」「ニチイ」を迎え、1971(昭和46)年4月28日に開業した。既に築50年を超える長寿建造物となっている。
関西スーパーというと、関西圏の人はもちろんのこと、OKとH2Oリテイリングによる争奪戦が行われたことで全国的に有名なスーパーマーケットである。とはいえ、関西スーパーという名前が示す通り、この企業はスーパーマーケット事業のみを営んでいる企業。それがなぜ「ショッピングデパート」なる施設を作ることになったのだろうか。その裏には、当時の伊丹市内における状況と「伊丹ショッピングデパート」を巡る駆け引きがあったのだという。
1970年代の阪急伊丹駅周辺。国土地理院地図より抜粋
昭和43年頃から始まった店舗の大型化。阪急伊丹駅周辺はその中でも大型化が顕著に進んだ地域となっており、長崎屋やオアシス（現・阪急オアシス）、イズミヤ等が進出。伊丹市に本社のあった関西スーパーは年を追うごとに競争相手が増える状況となっており、当時まだ数店舗しかお店のない関西スーパーにとって危機的な状態に陥っていた。
噴水は伊丹ショッピングデパートのシンボルだった (現在は撤去)。
一方、伊丹ショッピングデパート建設予定地の地主も、同じように頭を悩ませていた。当初計画ではダイエーがデベロッパー兼核テナントとして出店予定となっていたが、当初の建物として提案されたのは地上4階建て、地下階なしというもの。さらに地主は建物の建築費を10年間ダイエーに償還するという条件となっており、これでは賃貸収入は全て償還金に回されてしまう、と今後の行く末を憂いていたという。
この相談を受けた関西スーパーの経営陣は、すぐに造成組合に参加。ダイエーの代わりに伊丹ショッピングデパートのデベロッパーとなり、建物も地下1階・地上8階として収容能力を増強。地主にも収入が入る形へと変更した。なお8階建てというのは伊丹空港の規制でこうなったのだそう。
近年はイオンモールの進出、ニチイの撤退(1995年閉店)等により、施設単独での集客が厳しくなってきているというこの伊丹ショッピングデパート。ここからは、そんな施設の現在の状況を見ていくこととする。
絶妙にデパート感の残る内部
伊丹ショッピングデパートの歴史について見たところで、その様子を見ていくこととしよう。建物は駅のすぐ横に隣接しており、駅とはペデストリアンデッキを通じて直結。アクセスに関しては文句なしだ。
中の様子を見ていこう。2022年訪問時のテナントは上のような状況。核テナントに「関西スーパー」と「TSUTAYA」、それ以外にも多くのテナントが入居。開業当初は地下1階に関西スーパーが入居していたが、現在は1階に移転している。「デパート」という名称らしく屋上庭園も完備しており、関西スーパーらしいQOLの高い施設に仕上がっていることがうかがえる。
館内は上のような状況。1971年開業ということもあり、歴史を感じる設備が数多くあるのが面白い。しかしその一方、館内はさすがにデパートとあって小綺麗に整備されており、何も知らない人からすると全く古さを感じない、非常に綺麗な仕上がりをしている。
築年数の高いこの伊丹ショッピングデパートだが、正直この建物に「古い」という言葉は似合わない。確かに年数が経っているのは否定できないが、本当に1971年築か？と疑ってしまうほどの美しさを保ち続けている。その辺の2010年築くらいのショッピングモールと全然変わらないんですけど・・・さすがにそれは言いすぎか（笑）
最後に屋上庭園の様子を。さすがに今の百貨店の屋上とは比べ物にならないが、現在も屋上で芝生を整備しているというだけでも相当なものなのだろう。脱帽です。
ちなみにこのスーパーの2階にはレストランが入っているのだが・・・「FOOD CORT」はないでしょう（苦笑）
