近畿大阪府和泉市

フチュール和泉 工事遅延と変更を重ねた「苦難の再開発」の真髄に迫る

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大阪府の南部に位置する和泉市は2つの顔を持つ街として知られており、JR和泉府中駅周辺は比較的昔ながらの街並みが色濃く残る一方、泉北高速鉄道の終点にあたる和泉中央駅周辺は実に近代的な街並みが広がっており、取材班としても注目に値する存在となっている。

和泉府中駅

今回はその中でもJRの中心駅「和泉府中」駅にやってきた。阪和線では天王寺・三国ヶ丘・鳳についで4番目の乗降客数を誇るこの和泉府中駅だが、阪和線そのものの利用者が他と比べてやや少ないこともあり、駅周辺は典型的なベッドタウンの様相。週末の訪問であったが非常に静かな雰囲気が広がっている。

フチュール和泉

そんなJR和泉府中駅の東口を出て歩いて1~2分、駅から微妙に歩いた場所には「フチュール和泉」なる再開発ビルがそびえ立っている。2011(平成23)年に開業したこの再開発ビルには、なんでも工期遅延と度重なる予定の変更により、当初の計画とは全く異なるビルが開業してしまったようだ。今回は、そんなJR和泉府中駅前に位置する再開発ビル「フチュール和泉」について、その裏に隠された事情を見ていくこととする。

遅延と変更だらけの再開発「フチュール和泉」

和泉府中駅

フチュール和泉は、JR和泉府中駅前に位置する再開発ビル。「和泉府中駅東第一地区第二種市街地再開発事業」により2011(平成23)年に開業した。「フチュール」という名称はフランス語で「未来」という意味から来ており、和泉府中の「府中」とかけて和泉市の発展を祈願する意味が込められているようである。

和泉府中駅

元々実際の開業年よりも7年前にあたる2004(平成16)年に完成する予定だったこのフチュール和泉。事業計画の決定は2000(平成12)年に終了しており、途中までは非常に順調に進んでいたこの再開発であったが、その後事業協力者の決定に3年もの時間を費やすなどの理由により計画が大幅遅延。結果、都市計画や事業計画の変更を経た上で2011年までずれ込むという結果となってしまったのだとか。市施行という制約があるのは事実ではあるが、なかなかの話である。

フチュール和泉当初計画案

フチュール和泉広場設置予定図

先ほど少し「都市計画や事業計画の変更を経た」という話をしたが、こちらもなかなかに強烈な変更がなされている。当初の計画では

・商業・公益棟を1棟及び住宅を2棟建設(25階建及び11階建)

・商業・公益棟は1~3階を商業施設で固め、4階以上を公益施設として運営

・1階の広場は吹き抜けとして整備

・地下駐車・駐輪場を整備

・雨でも傘をささずに移動できるペデストリアンデッキを設置

という内容だった。ところが、変更に変更が重なった結果、

・商業・公益棟を1棟、住宅は1棟のみ建設(20階建)

・商業・公益棟は1~2階のみ商業施設、3階以上が公益施設

吹き抜けの広場は廃止(設置しない)

地下駐車場・駐輪場は未整備 代わりに地上5階建ての駐車場・駐輪場を設置

・ペデストリアンデッキを整備 ただし屋根なし(雨の日は傘必須)

へと変わってしまった。もはや原型がないんですがそれは。

フチュール和泉

この結果、当初とは全く異なった施設として開業したこのフチュール和泉だが、その内部は一体どのようになっているのか。ここからは、そんなフチュール和泉の内部の様子を見ていくこととする。

商業機能は周辺に譲った格好

フチュール和泉

フチュール和泉の概要と苦難の歴史について見てきたところで、中の様子を見ていくとしよう。前述したように、建物は5階建ての商業・公益棟と20階建ての住宅棟により構成。建物としては決して小さくないのだが、いかんせんかつての計画がかなりのものだっただけにショボさを感じずにはいられない。

フチュール和泉

2023年訪問時の内部の様子はこんな感じ。こちらも先ほど書いた通り、商業施設部分は1~2階の2フロアのみ、しかも2階は病院と予備校が並んでいるため、実質的な商業フロアは1階のみとなっている。周辺に「イオン和泉府中店」「カナートモール和泉府中」などの大型商業施設が多くあるため、役割を譲った格好だ。

注:イオン和泉府中店。フチュール和泉と線路を挟んで反対側に立地。和泉府中サティとして1990年に開業し、母体変更に伴いイオンに名称変更、現在に至る。

フチュール和泉

フチュール和泉

館内を回っていく。2011年開業と比較的新しいこともあり、非常にきれいな景色が広がっている。商業フロアは当初予定よりも減ってしまったが、その代わりとして図書館や温浴施設「SOLA SPA」などが整備されており、施設の広さの割には充実している模様。

フチュール和泉

民間運営とはいえ、一応商業施設としての側面もきちんと持っており、核テナントとしてスーパーの「コノミヤ」が出店。とはいえ、再開発地権者と思われる店舗がほぼほぼなくなってしまっているため、商業施設としての活気はあまりないのが実情といったところか。

フチュール和泉

駐車場エリア・住宅棟のほうも見ていこう。駅からつながるペデストリアンデッキはこの駐車場エリア・住宅棟まで続いており、駅からのアクセスはすこぶる良い。とはいえ、その先のエリアには住宅しかないのが辛いところで、実際にこのデッキを利用する人も地元住民を除くと多くない模様。いかにも第二種再開発らしい光景である。

ただし、あくまでこのエリアの整備の主役は「都市基盤施設の整備」と「防災面の問題の解決」。再開発と同時に広い駅前広場や幹線道路(駅前だけですが)が整備されており、再開発の目的そのものは達成されているといえるのではなかろうか。・・・それが良いものかどうかは別として。

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