皆さんご存じの通り、札幌市は北海道の中でも最大の都市であり、かつ道庁も置かれる「北海道の中心都市」として発展を続けてきた。そしてその規模は目に余るほどのことがあり、現在では東京23区を除くと横浜市・大阪市・名古屋市に次ぐ人口を誇るという。
そんな札幌市だが、北海道自体が明治時代以降になって開発が行われたという経緯もあり、碁盤目状に道がキレイに整備され、計画的な街づくりが行われているというメリットはあるものの、他に比べて歴史が浅いせいか、全体的に街が新しく、「古くから言い伝えられてきた由緒ある・・・」といった類のものはあまり存在しない印象を受ける。
しかし人間というのは実におもしろいもので、「無かったら作れば良いじゃない」の合言葉のもと、現在では札幌市内にも何軒か博物館や美術館の類が整備され、地元の人々や時には多くの観光客をも魅了し続けている。
そんな札幌市の博物館の中で、一風変わった博物館が近年我々の界隈の中で話題を呼んでいると聞きつけ、遠路はるばる札幌まで足を伸ばしたという次第だ。今回はそんなフシギでディープな博物館、「レトロスペース坂会館」についてご紹介しようと思う。
レトロスペース坂会館とは
レトロスペース坂会館は、札幌の中心・大通りやすすきのからやや西に外れたエリア、札幌市西区二十四軒にある博物館だ。札幌市営地下鉄二十四軒駅が最寄となっており、そこから歩いて約10分ほどの場所に所在している。
ちなみに「坂」などと書いているが、急な上り坂を登らないと到着しない訳ではないので安心してほしい(坂に関して言えば、同じ札幌市にある「真駒内滝野霊園」の方がよっぽど坂のキツいところにあった記憶がある)。
「坂」という名称は、この博物館を運営している「坂栄養食品株式会社」から由来している。坂栄養食品という名前は取材班のような北海道以外に住んでいる、いわゆる「内地」の人間にはあまり知名度はないが、道民にとってはしおA字フライやラインサンドといったビスケット類を製造する会社として割と有名な企業のようだ。
そんなレトロスペース坂会館だが、ビスケットを製造している会社の博物館ということもあり、ビスケットに関する展示でもされているのか?と最初は考えてしまうだろう。しかし、先ほどの写真を見て頂ければわかる通り、このレトロスペース坂会館の展示物においては決してそんなことはない。
ここに展示されているのは、端的に言ってしまえば世の中にあるもの全てだ。もう少し具体的に言うと、テレビや黒電話といった電化製品、人形やメダル、雑貨、そして日用品や飲料の缶に至るまで、まあありとあらゆるモノを何から何まで収集・展示しているのだ。というのも、このレトロスペース坂会館、実は2代目社長が趣味で集めたものを展示する施設博物館となっているそうで、集めたものをとりあえず展示しているという実に変わった博物館となっている。ここからは、そんなレトロスペース坂会館のその内部について、写真とともにお送りしていこう。
物が溢れすぎる博物館の内部
さて、前置きが長くなってしまったが中へと入っていこう。昼1時という真昼間に来訪したが、既にこの様相だ。決して広いとは言えない館内にこれでもかというほどの展示品が詰まっており、軽く見て回るだけでも相当な時間がかかる。1品1品じっくり見て回るには量が多すぎ、おそらく本当にじっくり回ろうと思ったら1週間はかかるものと思われる。
それにしてもものすごい量、そしてその陳列具合だな・・・。「圧縮陳列」という言葉が実によく似合う光景だ。そこかしこを見て回るたびにどこかしらで見たことのある品物を見ることができ、「懐かしい」というのか「驚き」というのあかよく分からない気分にさいなまれるのだが、ここまで下から上までギッチリと陳列されると目がチカチカする。おそらく見慣れていない取材班が悪いのだろうが、それにしても凄い光景だ。
ビールの缶一つとってもこんな調子である。初めて見たぞ、こんな光景・・・。
とはいえここは博物館。実にのんびりした風景が広がってるなー、と思いきや戦時中に使われたと思われるガチな品がさぞ当たり前かのように展示されていたりして戦慄させられる。普通の博物館だったらこんなごちゃまぜにして展示しないだろうし、やっぱり本当に館長さんの趣味で作ったんだろうな、ということが分かる瞬間だ。
なお、レトロスペース坂会館は全年齢OKの博物館ではあるものの、一部・・・な展示コーナーもあり、裸の女性の絵が多数展示されているスペースや緊縛されたリカちゃん人形等、少年少女には刺激の強いモノも多数展示されているため、子どもを連れて行く際には注意が必要だ。まあ元々貴重品の多い博物館なんでこの展示物があるかどうかで大きく変わるわけではないですが。
ちなみにこの縛られたリカちゃん人形だが、どうやらプロの方にお願いして作った「ガチでマジの作品」らしく、れっきとした理由のもとで作成されたもののようだ。ちょっとやりすぎ感をぬぐえないんですが・・・
先ほどの写真で変な印象を抱いてしまった方、ご心配なく。こけしが並ぶこんな可愛らしい光景も目にすることができますよ(笑)
なおこのレトロスペース坂会館だが、博物館自体があまり広くないということに加え、大量の所蔵品がところせましと並んでいることもあってか、非常に通路が狭い。一眼レフカメラ等での撮影も可能となっているが、くれぐれも所蔵品を傷つけたりすることのないよう注意が必要だ。
入場無料。だけどビスケット類を買おう
他ではまず見ることのできない品々が多く並んでいるこのレトロスペース坂会館だが、こちらの博物館、驚いたことに入場無料となっている。太っ腹すぎるって。
しかし当たり前だが、この博物館を維持・運営していくためには多額のお金がかかり、近年では展示品の盗難にも遭っているようで、レトロスペース坂会館もかなり苦しい状況にさらされているようだ。そしてそんなこともあってか、館内にはこんな表示がなされていた。
「本館の運営継続のため、ビスケット類のご購入をお願いしております。」
ということで、レトロスペース坂会館訪問の際はぜひ坂栄養食品のビスケット類を買って頂ければと思う。安いもので1個100円以下(取材班訪問時は最安で90円)で買えるほか、坂栄養食品のビスケットそのものが取り扱いが少なく、道外の方にとってはお土産としても使えるのでぜひ一度お買い求めいただければ、と思う。なお、道外の方もAmazonや楽天なんかで買えるのでぜひ下のリンクからどうぞ。
なかなかクセの強い博物館ではあるが、その内容は非常に面白く、札幌観光という面ではやや不便な位置にあるのは否めないが行く価値のある素晴らしい場所である。ぜひ一度訪れてみてはいかがだろうか。