「おしゃれ」という良いイメージばかりが先行する神戸市だが、だからといって全てのエリアが小綺麗であるわけではないということは前回の記事でも述べたとおりである。
<前回の記事>
このいわゆる「シタマチコウベ」と呼ばれるエリアとして「湊川・新開地周辺エリア」「新長田周辺エリア」が挙げられていることも、前回述べた。
その中で今回は、「新開地」と呼ばれるエリアについて、ご紹介しようと思う。
パチンコ屋ばかりが並ぶ街、新開地
神戸新開地の中心地となっているのがここ、「新開地商店街」だ。新開地商店街は地下鉄湊川公園駅からJR神戸駅のすぐ近くまで続く、南北・東西ともに非常に長い商店街となっている。しかし、その中でも大半のお店が集中しているのが1丁目から3丁目、新開地駅から湊川公園駅を結ぶアーケード商店街区間となっており、今回はそのエリアについて見ていく。
新開地商店街の最大の特徴は、なんといってもパチンコ屋だらけだという点に尽きるだろう。長い商店街ではあるが、そのアーケード区間はわずか500mほどに過ぎない。しかしそんな中で、なんと7つもの店舗が競い合うようにして営業を続けているのだ。Google Mapで見てもこの有様である。
…この時点で既に危険な香りがプンプンするのだが、街を見ていくこととする。
新開地商店街の入口は、湊川公園のすぐ南側から始まる。既にファンキーなアーケードがあるあたり、もともとそういう場所だったのだろう。それにしても、「車両進入禁止」と書いてあるにも関わらずいきなりチャリが入っているあたり、やはり関西の限界というものを感じざるを得ない。
やはりというか、入るなり早々これである。メトロ系のパチンコ店はこの周辺に複数あるのだが、自転車や原付の多さから察するに、このお店が一番にぎわっているようだ。もっとも、この周辺に自転車を置ける場所がないということも影響しているのだろう。そもそも「車両通行禁止」ですからね、ここ。
そのメトロガーデンのすぐ向かいにあるのがこちら、「メトロワールド」だ。見る感じ、おそらく系列店なのだろう。それにしてもいかついおっさんがぼくのことを見てくる。なぜなのか分からないが、恐ろしく肩身が狭い。
しかし、全てのパチンコ屋が営業しているのかというと、そうでもないようだ。こちらのお店、「MEGAコアラ」は既に閉業済み。しかし選挙ポスターが貼られるわ、自転車はそこらじゅうに置かれるわ、いろいろとカオスな地域である。なお、この向かい側に「コアラ」というお店もあるが、こちらも既に閉店している。
神戸市は阪神・淡路大震災で大きな被害を受けたこともあり、街全体が新しくなってしまっている。この商店街も例に漏れず、非常にキレイだ。しかし、道を歩いているのはほとんどがおっさん。たまにおばさんも見かけるが、都会の商店街にありがちな女性グループやカップルを全く見かけない。その上、商店街らしい賑やかなお店も、実は自動ドアが開くたびにものスゴイ騒音をまき散らすパチンコ屋ばかりだというトラップつき。恐ろしいほどのDQNっぷりに、頭を痛めそうになる。
東の浅草、西の新開地の面影はどこへ
かつて「東の浅草、西の新開地」と呼ばれ、福原遊郭(風俗街)を核として、映画・演劇場が軒を連ねる、神戸最大の繁華街として発展してきた新開地だが、その面影は驚くほど残っていない。上の写真は「ラウンドワン新開地店」を撮った写真だが、ここは元々「聚楽館」という劇場があったところで、その跡地にあたる。現在ラウンドワンが入っている土地は、もともとあった聚楽館の姿を模して造られたもので、その面影を伝えているらしい。筆者には全く分からないが。
どうやら、劇場は宝塚に取られてしまったようだ。劇場くらいしか特長のない(と言っては失礼だが)宝塚にとって、宝塚大劇場が無くなることは死活問題。それに加え、新開地が神戸で一番の繁華街でなくなったことも大きいだろう。そもそも「福原」という地名を知っている人ですら、今の若い世代では少なくなってしまった。彼らにとって、神戸の繁華街と言えば「三宮」「元町」であり、もはやこのエリアは見向きもされないのだ。
地下駅である新開地駅に直結しているお店も、もちろんパチンコ屋。駅構内にパチンコ屋のアホみたいな騒音が流れるこの光景も、いかにも男の街という形相だ。何が面白いって、この駅にあの阪急電車が来ること。関西の高級住宅地・芦屋や御影を通ってきた列車は、ここで折り返すのだ。梅田も梅田だが、新開地も新開地なのだ。まぁ、阪急梅田はまだ良い方か。
震災から復興しても相変わらずおっさんの楽園と化した街、新開地。たとえ街がキレイになろうとも、お店が変わらなければ人の流れは変わらない。それをまざまざと見せられた、そんな場所だった。