先日、大阪の中心地「難波」及び「天王寺」に「やばい商業施設」があることをお届けした。


難波(正確には道頓堀だが)のほうにある「道頓堀ゼロゲート」は「インバウンドに頼りすぎた結果、誰も来なくなってしまったビル」、天王寺にある「あべのベルタ」は「隣のショッピングモールに全て持っていかれてしまった商業施設」という形でご紹介させていただいた。
そして今回ご紹介する商業施設は、「梅田イーマ」なる施設である。
関西に住む人はもうご存じかと思うが、梅田は大阪で一番、いや西日本で最も栄えている繁華街といっても過言ではない。阪急百貨店、阪神百貨店、グランフロント大阪、ヨドバシ梅田などといった大型商業施設がいくつも立ち並び、またJRや阪急、阪神、さらに地下鉄が3路線乗り入れる交通の要衝でもある。そしてこの先、うめきた2期の開発や、通称「北梅田駅」と呼ばれる、地下鉄なにわ筋線の乗り入れも予定されており、今後ますます繁栄していくだろう、大阪でも髄一の「期待のエリア」として知られるエリアでもある。「同和と銀行」という本によると、このエリアはなんだかいろいろと深い闇のあるエリアになるそうだが、何はともあれ、梅田は西日本の中心として今後ますます発展していくだろう。
同和と銀行 三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録 /講談社/森功
こんな一等地エリアに、まさか瀕死状態の商業施設があるとは、とても思わないし、思えないだろう。実際私も訪問するまではそう思っていた。しかし、この梅田イーマ、残念ながら想像以上に残念な場所だった。ということで今回は、そんな「梅田イーマ」の現状についてお届けしていこうと思う。
梅田イーマ・衰退の歴史
梅田イーマへのアクセスは、決して悪くない。JR大阪駅から約5~6分、阪神大阪梅田駅からであれば約3~4分。地下街からアクセスすることができ、いわゆる「ダイヤモンド地区」と呼ばれるエリアの中にある。少々分かりにくいところにあるものの、決して不便な場所にあるなどということはない。
そして面白いことに、この施設の開業は意外と新しい。2002年4月開業と、決して「オンボロ施設」とは言えない建物だ。しかし、この開業時期が悪かった。この開業時期が、今のような惨状を引き起こしたのだ。この施設は、当時注目を集めていた「セレクトショップ御三家(ビームス、ユナイテッドアローズ、シップス)」や映画館、その他個性的なファッションブランド店や有名スイーツ店などが出店したこともあって、当初は大きな話題を集めていた。
しかし、それも長くは続かなかった。
梅田の再開発が、2000年代後半から一気に進んだからだ。
まず2008年、西梅田に「ブリーゼブリーゼ」なる商業施設が開業。セレクトショップ御三家の一角であった「ユナイテッドアローズ」が移転してしまう。そしてその後、2011年、JR大阪駅に隣接して「ルクア大阪」が開業。複数のテナントがより良い立地を求めて移転してしまったのだ。

画像はWikipediaより抜粋
この結果、梅田イーマを売上と集客の双方から重ねてきた主要ブランドが次々に移転。その結果、売上はピーク時の1/3にまで減少してしまい、数字を見ればわかる通り「悲惨な状態」へと陥ってしまったという訳だ。
とはいえ、梅田イーマも手をこまねいてはいなかった。2015年4月、梅田イーマは開業以来初の大規模リニューアルを実施したのだ。

25もの店舗が新しく出店し、これまでの枠にとらわれない、様々な店舗が出店することになった。これで梅田イーマは完全に復活・・・しなかった。というのも、梅田の大規模開発はこれで終わらなかったからだ。梅田イーマがリニューアルを行った2015年4月、もともとJR大阪三越伊勢丹が入居していたビルが「ルクア イーレ」としてリニューアルオープン。さらに2019年には、ヨドバシ梅田と隣接する地に「リンクス梅田」が開業。さらに「うめきた2期」の開業がこれから控えるなど、流れは完全に梅田の北側へと向いていた。
この結果、リニューアルを敢行した「梅田イーマ」であったが、結局複数のテナントが撤退、今の状況に至っているという訳だ・・・。
梅田イーマの悲惨な今。
さて、ここまで梅田イーマの歴史、そして梅田イーマを取り巻く周りの環境について述べてきたが、ここからは梅田イーマが今どうなっているのか、その現状を見ていくことにする。
まず先ほども書いたが、「梅田イーマ」へのアクセスは悪くない(めちゃくちゃ良いわけでもないのだが)。
梅田イーマは、梅田の地下街から直接アクセスできる。いわゆる「ディアモール大阪」と呼ばれるエリアから直接入ることができ、これは大きなメリットだ。しかし、地下街の人通りの割に出入りする人があまりにないのが気になるが・・・。
フロアガイドはこんな状態。梅田イーマはB2Fから13Fまでの15フロアがある。ただし、そのうち7~13Fの6フロアが映画館で占められているため、実質的なフロアは8フロア+映画館となっている。しかしこれを見れば分かる通り、実際に営業しているのは6フロアのみ。しかも1~2テナントしか入っていない階も多く、かなりスカスカな状況だ。
まあ、実情は後でお伝えするとして、とりあえず中に入っていくことにしよう。
地下2階にはかの有名な「スターバックスコーヒー」が入居。しかし休日の昼下がりだというのに随分とお客さんが少ないな。某ウイルスの状況下でイスの数が減らされているのにも関わらず、このガラガラっぷりである。場所の関係からか、梅田エリアのスタバでは一番の穴場と言えるかもしれない。
しかし、それ以外には一切お店なし。梅田の地下街そのものは人通りも多く、お店もたくさん営業しててにぎわっているのに、一本入ったらこれである。何がこうさせているのだろうか、よくわからない。決して悪い場所ではないんだけど、なんだか惜しいというかなんというか、残念だと言わざるを得ない。
一つ上にあがり、地下1階に来た。この階はお店も少数ながら営業していて、セレクトショップやカフェなどがあった。しかしそれにしても、実にゆっくりとした時間が流れる空間である。まさか、梅田にこんなゆっくりできる空間があるとは思わなかった。ちなみに、取材班が梅田イーマを訪問したのは休日の3時ごろ。商業施設が最も混み合う時間だと言っても過言ではない。それでもこの空き具合。快適ではあるんだけど、なんだかなぁ。
それにしても、ここのお店で扱っているものは随分と意識が高いな。もともとそういう場所であることは百も承知ではあるんだけど、ルクアやグランフロント大阪なんかと比べても明らかに状況が違う。もともとセレクトショップが集まっていた名残なんだろうなぁ。まあお客さんは全然いないんですが。だいたい、大阪に「意識高い」を求めるのが間違いだと思うけどね。意識高いのは神戸であって、大阪ではない。そのことを改めて認識させられる瞬間だ。
3Fに上がってきた。3Fはもともと「アウトドアエリア」として開発されたようで、元々はアウトドアショップが多く入っていたようだ。とはいっても、今は全て閉店しているのだが・・・ お店が1つもやっていないせいで、エスカレーター前にあるシャッターが閉じられ、中に入れないようになっていた。そちらのほうが都合が良いのは分かるのだが、いかんせん寂しすぎるな。
続いては4F。4階からは、1階までの吹き抜けを見下ろすことができる。とはいっても、何か特別なものがあるわけではない。あるのはただ、閉店した、もぬけの殻となっているお店だけだ。とても西日本最大の繁華街、しかも駅から5分のところにあるとは思えない光景だ。言っておくが、これは建設中の光景ではない。れっきとした、「ちゃんと営業している」商業施設の姿だ。何がこうさせたのか、原因は分かっているとはいえ、やはり不思議でしかない。
大したものはないということは分かっていたが、レストラン街にも来てみた。もともと5Fと6Fの2フロアあったレストラン街は、現在では5Fのみに縮小、それも6店舗あったものを4店舗まで減らして営業している。近くに阪神百貨店の「スナックパーク」や大阪駅前ビル(居酒屋を中心とした飲食店がそろう)があるのが大きいのだろう。逆に、つい最近まで2フロア分のお店があったことが不思議なくらいだ。レストランに関しては、梅田イーマの中では健闘しているといえるだろう。その割には・・・という感じはもちろん否めないのだが。
ちなみに、7Fには映画館があるのだが、こちらは普通の映画館らしい光景が広がっていたのでノーコメント。お客さんが少ない気がしたが、もともとそうなのか、それとも新型コロナウイルスの影響なのか、正直よくわからない。梅田地区の映画館といえば「大阪ステーションシティ」が有名だが、こちらのほうが空いているという理由で一定の人気を誇っているのは確からしい。良いのか悪いのか。
まとめ 今後が気になる物件ではある
大阪・梅田。この一等地に位置するビルが、こんな状況になっているとは思いもしなかった。正直、今のままでは全てのテナントが無くなるのも時間の問題だと思う。正直、見通しは明るいとは言えない。とはいえ、そんな中でも光明が見えないわけではない。実は、この「梅田イーマ」、大阪に本拠を置くデベロッパー・ダイビル等が2022年3月にこのビルを取得したという発表があったのだ。

2025年に行われる、大阪万博。それに向けて、この商業施設はどうなっていくのか。これからも、その動向に注目していこうと思う。