京都市の再開発といえば、JR山科駅前の「ラクト山科」が有名だろう。商業施設・オフィス・住宅・雑居ビルなどなど、4つの建物が駅前にそびえ立つその姿は見事という他ない。
山科エリアばかりが注目を浴びるこの京都市の再開発だが、再開発は山科のみに留まらず、比較的土地に余裕のある郊外のエリアを中心に行われている。かつては街外れに位置し、雑多な建物ばかりが並ぶ京都駅の南側のエリアもそのひとつだ。現在はイオンモールなんかも並び、一大観光拠点となっているこの京都駅周辺も、かつては実にマズい光景が広がっていたのだが、これに関してはまた別の話(少々デリケートな話になるので、気になる方は自分で調べてみてください)。
そんな京都駅の南側・八条口側では、京都市で初めての再開発事業によって建てられた再開発ビルが存在しており、現在に至るまでその姿を多くの人々に見せているのだという。今回は、そんな京都駅南側に位置する再開発ビル「京都アバンティ」について、その現況を見ていくとしよう。
京都市初の市街地再開発「京都アバンティ」
京都アバンティは、京都市南区にある複合商業施設だ。京都市による初の再開発事業として、かつて京都市営バスの営業所などが営業していた跡地を再開発する形で1984(昭和59)年に開業した。開業から約40年と、再開発事業にしてはかなり古い部類に位置している。なお、所有者はもはや恒例の「第三セクター」。京都市の第三セクター「京都シティ開発」によって建物が保有されている。これは山科の「ラクト山科」も同様だ。
京都アバンティは一見2つのビルにより構成されているように見えるが、実際は単一のビルにより作られている。しかし実際は商業施設「京都アバンティ」が入る棟とホテル「ホテル京阪京都グランデ」に分かれており、これら2つの棟の行き来も基本的に地上階もしくは地下階でしかできないことから、実質的には別の存在と言って良いだろう。
なお、この京都アバンティはただ建物を作るという意味での再開発を行っているだけではなく、JR京都駅の北口と南口とを結ぶ自由通路の整備をも兼ねており、これがあるおかげでJR京都駅の南北回遊が行いやすくなっている。とはいえ、京都駅のその規模を考えるとなかなかの距離がありますが。
所有・権利・運営が全て別会社!?
さて、京都アバンティの概要について書いたところで、いよいよ中へと入っていこう。テナントの主役となっているのは、やはり何といってもチェーン店。いかにも再開発らしい構成だ。
京都アバンティの中を巡っていく。フロアガイドにもある通り、全体的にチェーン店ばかりが並ぶ構成だ。京都駅前かつ駅直結という立地のせいか、賃料も高いのだろう。買い回りという点では便利なのかもしれないが、少々普通すぎる印象が拭えない。別に悪いとは決して思わないのだが、なんだかなぁ・・・と感じる一幕だ。神戸なんて駅前からトンデモ物件が並びまくっているのに、エラい違いである。
館内を回るにつれ、段々と退屈になってくる。何せ、あまりにもチェーン店ばかりが並びすぎてしまっているのだ。再開発ビルらしい個人店はほとんど皆無で(飲食店街に少々並ぶ程度)、見栄えだけの良い全国規模のお店ばかりが軒を連ねているその姿。何だかパルコや丸井あたりを思い浮かべてしまう、そんな既視感ばかりが目を貫く。
先ほど「パルコや丸井あたりを思い浮かべてしまう」と書いたが、それもそのはずで、この京都アバンティなるビルの商業棟は、所有こそ第三セクターの元にあるものの、実際の運営はOPAに任せているという現状があるからだ。しかもさらにややこしいことに、その運営を行う権利はOPAではなく、大手スーパー「イズミヤ」が持っているというから難しい。
詰まるところ、この京都アバンティなる再開発ビルの商業棟は、
・所有:京都シティ開発
↓委託
・運営権利:イズミヤ
↓委託
・運営:OPA
という、二重構造によって管理がされてしまっているのだ。そしてさらに困ったことに、ホテルエリアに関してはホテルを運営する京阪ホテルズ&リゾーツが、先ほどの項目であげたJR京都駅の南北を結ぶ自由通路は京都シティ開発が直接管理しており、結果として同じ再開発ビルの中に4つの事業者がそれぞれ分担する形で運営を行うという奇妙な状況が出来上がってしまっているのだ。よくこれでやっていけるな。
しかし、そんな状況下にあるこの京都アバンティ。さすがにJR京都駅の目の前という立地が効いているのか、こんな訳の分からない運営状態でもテナントはなんと満杯。結局立地なんですわ。再開発ビルなんてそんなもんですよね・・・。