とがった頭と吊り上がった目が特徴の、子どもの姿をした幸運の神の像、「ビリケン」。足の裏を触ることでご利益を得られるということで人気を博していることで有名だろう。実際、このビリケンは本来アメリカで誕生したものなのだが、今ではアメリカよりも日本、特に関西で見る傾向にあるのは取材班だけだろうか。
そんなビリケンの中で最も有名なのは、大阪の通天閣の展望台にあるものだろう。今でこそこのビリケンは通天閣の展望台の中に設置されているが、もともとこのビリケンは新世界にあった遊園地「ルナパーク」に設置されており、現在のものは3代目になるらしい。
そんなビリケン様だが、日本最古のビリケンはどこにあるのかというと、なんと大阪の隣、兵庫県神戸市兵庫区にそのものはあるのだという。今回は、そんな日本最古のビリケン様の残る神社、「松尾稲荷神社」について、その概要と様子についてお送りするとしよう。
松尾稲荷神社の概要
松尾稲荷神社は、兵庫県神戸市兵庫区東出町3-21-3に位置する神社である。この神社がいつ創建されたのかは正確には不明だが、旧湊川の西の堤に700年以上前から存続する神戸市内でも髄一のお稲荷様として一定の知名度を誇っているそうだ。また、現在の社殿は1914年に造営されたもので、今に至るまでその名残を留めている。
松尾稲荷神社の最寄りはJR神戸線・神戸駅となっているが、その最寄り駅からも徒歩10分ほどかかる場所にあり、アクセスに関しては決して良い場所にあるとは言えない。しかし、その分住宅街の中に突如出現するある意味神秘的な部分があり、場所が悪い分人出も少なめで非常に落ち着いた雰囲気を保っている。神戸といえばハーバーランドの物件が目立つが、ちょっと中心から外れると昔ながらの下町が残っており、本当に面白い。
通常、「お稲荷さん」と言えば商売繁盛と衣食住についての神様を祀っていることが多いが、この松尾稲荷神社では商売繁盛と「縁結び」について祀っている、少々珍しい神社となっている。これについては、公式サイトでも以下のような説明がなされている。
稲荷大神様は商売繁盛と衣食住の神様ですが、当社は縁結びのお稲荷さんとしても古くから篤い信仰を受けてきました。石段下に恋占いの店舗も常設されていた時期もあり、現在に至るまで多くの男女が良縁を求めて参拝されています。
おかげさまで周りの商店街が寂れまくってるんですが、もしかしてこの松尾稲荷神社の神様のせい・・・ではないよね(笑)
通常、神社と言えば鳥居の真ん中に社額があるのだが、この神社では鳥居の左側に社額が置かれている。これは、阪神淡路大震災の被害で神社の社額が落ちてしまった為にこんな状況になってしまったのだそうで、令和の世となった今でも地震のことを忘れないため、このような状態のまま置いているのだそうだ。神戸市と阪神・淡路大震災は切っても切れない関係にあるが、ここも例外ではないようだ。
松尾稲荷神社の様子
住宅街の中に突如現れる神社
さて、前置きが長くなったところでさっそく松尾稲荷神社の中へと入っていくとしよう。先ほどの項目でも述べたが、下町の中に突然神社の鳥居が現れるため、既に驚きでいっぱい。こんなところにビリケンさんがあるのかと疑ってしまうが、鳥居の隣に赤字で「ビリケンさん」と書かれているのがまだ救いか。
松尾稲荷神社の内部へと入っていく。境内には鳥居が何本か立っており、ミニ伏見稲荷大社的な風格を感じさせる。もちろん、本家とは比べ物になりませんが。
中に入ると、すぐにビリケン様が現れる。ただしこちらのビリケンは日本最古のビリケンではなく、「平成のビリケン様」という別の名称がつけられている。日本最古のビリケンは本殿の中にあるので要注意。ちなみにこちらのビリケンは元々北野坂にあったものを平成30(2018)年にここに移したものだとのこと。
そしてそのビリケンさんのとなりには「一眼成就の碑」なるものが。もともと伊勢神宮を遠いこの場所から拝むための碑だったそうで、真ん中についている赤く丸いガラスが伊勢神宮を望む目のように見えることから、「一眼成就」なる名前がついたそうだ。今や関西からは近鉄特急で日帰りできるようになってしまった伊勢神宮だが、当時は憧れの存在だったんでしょうね。
日本最古のビリケン
さて、前置きが終わったところで日本最古のビリケンがあるという場所へと入っていくとしよう。日本最古のビリケンは松尾稲荷神社の覆殿の中にあるということで、その中へと入っていく。中は暗いが、それでも中が一通り見渡せるようにランプがつけられており、それほど見通しも悪くない。
そしてその奥に、日本最古のビリケンはあった。一般的に言われるビリケンとは違い、なんとも言えない絶妙な表情をしている。しかも顔以外の部分は赤色の服で覆われ、ビリケンの特徴である足裏には触ることができない(公式サイトの画像では触れそうなんだけどね)。
この松尾稲荷神社に鎮座されているビリケン様はなんと木製なのだそうで、大正時代初期、神戸に寄港したアメリカ人の水兵さんが持ってきたビリケン様を元町にある洋食屋の主人が真似て作ったものなのだという。そしてそれがあまりに人気が出てしまったため、その洋食屋の主人が松尾稲荷神社へと相談に行き、結果奉納されるようになったとのこと。貴重な存在なので大切に扱いましょう、ってことなんでしょうね。
ちなみにこの松尾稲荷神社、ビリケンさんにちなんだグッズも売っているそうですよ。良かったら買ってみてください。
実は・・・恋愛成就でも有名です
ビリケン様で有名な松尾稲荷神社だが、看板に「商売繁盛 縁結び」と書いてある通り、通常ビリケン様がご利益を与える商売繁盛に加え、この松尾稲荷神社では恋愛成就にも強みを持っているらしい。もともとこの街にはかつて「福原遊郭」なる赤線地帯が存在しており、その名残として縁結びにも活路を見出したらしい。
ということで、恋みくじ(100円)を買ってみる。もう長いこと彼女のいない取材班だが、この先どうなっていくのでしょうか。未来のことは分かりませんが、とりあえず願っておくことにしましょう(笑)あ、中身は内緒ですよ(笑)