日本には実に多くの「変な施設」があるもので、これまで当Webサイトでも「青空が見えてしまう地下街」や「小さすぎてまともに成立していない百貨店」等、関西地区を中心に全国の様々な事情を抱えた施設を取材してきた。
さて、今回やってきたのは神戸市兵庫区、湊川公園である。再開発・商店街・商業施設をメインにしている当サイトだが、いったいなぜこんなところに来たのかと疑問に思う方もいるかもしれない。では、なぜこんな場所に来たのかというと、
公園のすぐ下に再開発施設が整備されているからだ。今回は、そんな公園のすぐ下に作られた再開発施設、「湊川パークタウン」について、その経緯と現状を探っていくとする。
公園の下で再開発「湊川パークタウン」
湊川パークタウンの不思議な構造とその経緯
湊川パークタウンは、兵庫県神戸市兵庫区に位置する再開発ビルである。対岸の「湊川商店街」及び他3つの商店街で構成される湊川市場の一角を担っており、再開発ビルでありながら商店街色の強い場所として一定の地位を保っている。なお、この湊川パークタウンが開業したのは昭和50年代(1975~1984年の間。正確な時期は不明)だが、湊川公園が開業したのは60年以上前の1911年だとのこと。
湊川パークタウンは3層構造となっており、1Fと2Fが再開発ビル、3Fが公園となっている。坂の多い神戸らしく、1Fと2Fの双方から地上へと出られるようになっており、それに加えて3Fの公園からも新開地方面(新開地商店街等)へと段差なくつながっているというから驚きだ。
なお、上の地図は1,2Fと3Fで縮尺が異なっているため要注意。実際には公園が他の階と比べて非常に大きくなっている(すなわち、3Fのみ縮尺が大きい)。
昭和と令和の融合する湊川パークタウン
さて、前置きが終わったところで早速湊川パークタウンの中へと入っていこう。湊川パークタウンは駅の南側で神戸市営地下鉄湊川公園駅・神戸電鉄湊川駅と接続しており、アクセスは悪くない。まあどうせ若者たちは三宮やハーバーランドあたりにでも流出するのでしょうが・・・。
館内に入ると、さっそく豪勢そうな玄関がお出迎え。赤帯のエスカレーターに大理石の壁、そしてちょっと古臭く見えるものの、今でもバリバリ現役の照明(しかもちょっとムーディー)。いかにもバブル全盛期のような建物にしか見えないが、残念ながらそれよりも古い建物になります。
湊川パークタウンの新開地側に最も近い側は「湊川いちば美食街」と称し、様々なレストランが立ち並ぶ場所となっている。なんでも湊川の市場で仕入れたものをそのまま料理にして提供しているのだそうで、公式Instagramでは「新鮮でおいしい食材を多く取り扱う湊川市場。その美味しさを直で味わえる、ここにしかないお店が集まります。」という宣伝がなされている。市場の素材を地産地消だなんて、どれだけ美味しいんでしょうね。さすがに「神戸の台所」と呼ばれるだけのことはある。
その中でも最も庶民的な姿を残すのが、この「湊川大食堂」だろう。市場らしいいかにもメニューが並んでおり、取材班のような貧乏彼女なし男性でも入りやすそうな雰囲気を醸し出している。酒でも飲みながら近くのおじさんと話し込みたいですね。このウイルスが猛威を振るう中では厳しそうですが。
湊川パークタウンの奥へと入っていこう。湊川パークタウンの中にある店舗の多くは服飾・雑貨に関する店舗となっており、神戸らしい高級感が建物の中全体に漂っている。周辺の商店街では食料品店がマジョリティを占めているのだから、これは大きな違いだ。しかしお店は綺麗なのにお客さんの年齢層が高すぎる気が・・・(オバ服店が多いのは事実だが)。
しかしとはいえ、近年では良くも悪くもこの昭和らしい風景が無くなってきている部分があり、携帯電話の販売代理店等、何軒かチェーン店も進出してきている。ライフスタイルの変化とともに湊川パークタウンのお店も変化する。ある意味必然ではあるのだが、もうちょっとどうにかならなかったんですかね。湊川大食堂なんか2020年オープンなのにうまく地元に溶け込もうとしてるのに・・・。
昭和らしい風景が失われ始めているこの湊川パークタウン。だが、令和の世となった現在でもその昭和や平成初期をほうふつとさせる景色が多く残っており、やけに花柄の目立つお店の看板や宝くじ売り場併設のサービスカウンターがあったりするなど、妙に不思議な感覚になる。
反対側から湊川パークタウンを見つめる。下を見れば分かる通り、この湊川パークタウンは坂を掘るようにして建てられており、こちらの側からは坂を伝って1F、2Fの双方から店内に入ることができる仕様となっている。坂の多い神戸ではよく見る光景だが、平地の多い大阪あたりから来ると困惑する光景なのかもしれない。
2階へと移ろう。2階も1階と同様、昭和というか平成初期というか・・・といった場所が大半を占めている。かつては「湊川サティ」という施設もあったそうで、現在もその面影が残っているとかいないとか。これに関しては下のツイートがわかりやすい。
きてや湊川店
パークタウン2階に入居している衣料品店。
元は湊川サティだったらしい。
知識としては衣料品のみの小型サティがあったのは知っていますがこれがサティとは思えないな…
店内は意外と痕跡多め。カゴや什器もサティのものを流用しているようです。レジ廻りもサティ仕様。 pic.twitter.com/ofwuUGagG2— アイビス (@MYCAL_Love) October 2, 2020
昭和らしい面影残る湊川パークタウン。ただし一部のエリアに関しては「神戸湊川 Otonari」というシャレオツな区域が広がっている。なんでも、「手づくり・手仕事に日々触れられる、温かい寄り道の場所」ということで2013年に大規模リニューアルされたのだそうだ。これが評判だったことから2019年に追加のリニューアルが施され、この追加部分に関しては「Atelier Otonari」という名前で営業を行っている。
そんなOtonariの内部だが、基本的な構造は残しつつ(残りつつ)も、随所に神戸らしさとレトロっぽさの両立する景色が醸し出されており、どこかの若者でにぎわう商業施設と比べても遜色のないクオリティに仕上がっている。
ただ一部しかないので浮いてる・・・ お金がないのは分かるが、もう少しどうにかならなかったのでしょうか。2階にしかないのでなかなか若い人には入りづらいし・・・
生き残りへと向けて様々なてこ入れを行っている湊川パークタウン。その効果にはやや疑問も残る部分もあるが、それでもこれだけの施策を打てていることには評価したい。神戸市の人口が減っていく中で、これからどのような施策を打っていくのか。その将来に期待しよう。