世間から何かとひとくくりにされがちな「アーケード商店街」という区分。しかし、その中身はというと驚くほど多種多様で、当サイトが訪れた限りにおいても「三軒家中央商店街」のようなレトロ感を色濃く残すアーケード商店街や、ポスターを貼りまくって集客に努める「文の里商店街」、果てはマル暴の事務所が入るアーケード商店街なんかもあったりと、なんだか実に様々な形のアーケード商店街があることを思い知らされる。
さて、今回は神戸市兵庫区・湊川と呼ばれるエリアへやってきた。かつては新開地とともに神戸の中心としてその名を轟かせたこの湊川エリアだが、JRの駅から離れていたこと、市の中心が東側に移ったこともあってか、この湊川というエリアも成長が止まってしまい、昭和の風景を色濃く残すエリアへと変貌してしまった感がある。
そんな昭和らしい風景が残る湊川地区だが、先日の記事で取り上げた「湊川パークタウン」、そしてそのすぐ近くにある「湊川商店街」については少々事情が異なっている。なんと、商店街をまるまる巻き込んだ再開発が行われ、見違えるようにキレイになってしまったというのだ(といっても昭和であることには変わりないんですが)。ということで今回は、そんな商店街をまるごと再開発してしまった街「湊川商店街」について、その再開発の様子と現状についてお届けするとしよう。
商店街まるごと再開発「湊川商店街」
湊川商店街は、兵庫県神戸市兵庫区に位置するアーケード商店街だ。湊川商店街を含めた5つの商店街で構成される「湊川市場」の中核をなしており、「神戸の台所」という愛称で地元の方々を中心に多くの人々から親しまれている。
湊川商店街の歴史は非常に古く、その歴史はなんと明治30年代(1897~1906)までさかのぼる。歴史で言うと日露戦争(1903-1904)と同じ時期、第一次世界大戦よりも前だというから、その歴史の異様な長さが分かるだろう。
そして驚くことに、この湊川商店街にアーケードが設置されたのもこの明治30年代になるという。当時から華麗なネオンサインが照らされ、神戸のランドマーク的存在として親しまれたのだとか。とても20世紀前半とは思えない光景だ。
しかし、そんな湊川商店街も高度経済成長期に入り、転機が訪れる。都市の近代化に伴い、湊川商店街に並ぶ建物が時代遅れとなってしまったのだ。加えて三宮・元町といった神戸市中央区の繁華街が台頭。その対策として1975年に再開発・アーケードの建て替えで対抗したという次第だ。なお、現在のアーケードは3代目のものだとのこと。1975年となるともう50年近く前のことになるし、新しくしなおしたんでしょうね。
この再開発とともに「みなとがわプラザ」「センタービル」「湊川パークタウン」という再開発ビルが合計4棟建立され(「センタービル」はA棟とB棟がある)、今の姿に至っている。お蔭様でアーケード商店街であるのにも関わらず、立派な再開発ビルが4つドンドンと並ぶ状態になっている。こうやって文章だけを並べると、いかにも若者向けの商店街に見えるが、実際はご年配の方ばかりなんですよね・・・。
昭和の再開発「湊川商店街」の今
路面店の少ない珍しい商店街
そんな湊川商店街だが、現在ではどうなっているのか。中の様子を探っていくとしよう。湊川商店街の南側入口から入っていく。入口にはご立派なアーケードと再開発ビル「湊川パークタウン」及び(特に掲示はないが)「センタービルA棟」がお出迎え。ご立派な姿を表している。
湊川商店街の中へと入っていく。大規模再開発が行われたせいか、この湊川商店街は2層構成となっている。見かけは立派なこの構造だが、実際のところ大半は1階しか使われていないことも多く、この湊川商店街も・・・というのが現状となっているようだ。
この湊川商店街という場所、路面店が少ないという他の商店街ではあまり見られない面白い特徴を持っている。これは、再開発の中のビルに別々に通路があることによるのだが、そのせいでお店が多く並んでいる割に活気がないな、と感じてしまう。おかげさまで自転車やバイクが置きやすいというメリットもあるにはありますが。
とはいえ、これだけでは駐輪場が足りないようで、ダイエーの入る「みなとがわプラザ」(後述)の前には多くの自転車がまるで行き場を失ったかのように置かれていた。整列されているだけまだ良いか。しかしそれだけの需要があるということに驚かされる・・・。
なんと1975年開業!「みなとがわプラザ(ダイエー湊川店)」
さて、ダイエーの入る「みなとがわプラザ」の前へとやってきた。このみなとがわプラザ、なんと1975(昭和50)年の開業。しかも当時からダイエーが核テナントとして入居を続けているという、数あるダイエーの中でも指折りのヴィンテージ物件なのである。
みなとがらプラザの現在の内部の状況はこのような形となっている。ダイエーはB1F~2Fの3フロアに入居しており、それ以外にも多数の専門店が入る総合ショッピングセンターに近い形態を取っている。かつてはダイエー系列の本屋「アシーネ」なども入っていたが、イオン系列に入り消えてしまった模様だ。
そんなみなとがわプラザだが、その一角には日本初のハンバーガーチェーン「ドムドムバーガー」が今も現役で営業中。ダイエー系列ということもあり、かつては神戸市内に多くのお店があったこのドムドムバーガーも、現在ではここ湊川1店舗のみ。栄枯盛衰とはこういうことなんでしょうね。
しっかし随分と凝った店内だな・・・。かつての日本の活気が、そして寂しさが少し残る空間でした。
メインロードから抜けると・・・【悲報】
湊川商店街は南北に伸びる商店街であると一般的に思われがちで、実際その南北に通る道路がメインロードとはなっているのだが、実はもう1本、途中から東西に伸びるアーケード商店街が存在しており、こちらも「湊川商店街」という名称がついている。
そんな東西側に関しては・・・残念ながら非常に寂しい状況となってしまっている。こちらは昭和50年代に再開発の対象とならなかったのか、最近になってから次々に建て替えが行われ、商店街というよりは住宅街のような様相を呈している。神戸市中央区に「サンロードクニカ」なる住宅だらけのアーケード商店街があるが、それと同じような状況だ。
そんな状態にあるためか、アーケードから吊るされる看板も真っ白。全国的に商店街の苦しい現状が伝えられていますが、なんだか寂しい世の中になってしまいましたね・・・。