大阪市阿倍野区といえば「あべのベルタ」に代表される阿倍野再開発地区の失敗事例が有名だが、その阿倍野駅から1駅隣にある文の里駅周辺にも昭和らしい風景が数多く残っており、その強烈な風景は令和になった今も地元住民のみならず、多くの人々を楽しませ、買い物へと奮い立たせている。
(前回の記事と同じ画像・・・(笑))
そんな文の里エリアには、阪神高速の高架及び谷町線の線路(地下にあるので見えないが)を隔てる形で「文の里商店街」と「文の里明浄通商店街」という2つのアーケード商店街が位置しており、それぞれ独自の手法による運営がなされていることは先日の記事でも述べた通りだ。
さて、先日は「文の里明浄通商店街」について述べたので、今回はその逆側にある商店街、「文の里商店街」について、その現状をお届けするとしよう。
<文の里明浄通商店街>
話題となった文の里商店街のポスターとは
まずは、以下の写真を見てほしい。
なんだかそこらでは見ない不思議なポスターだが、これらのポスターは全て文の里商店街に掲示されているポスターである。この手のポスターはSNSで何度も話題になっており、実際にTwitterなどで見たことがある人も多いだろう。
電通関西支社にいる若手を中心とした社員39名が、大阪商工会議所と商店街の協同組合と合同で制作したもので、「シャッターが閉まってしまった商店街」を盛り上げよう、という名目のもとで開催されたものなのだそうだ。
ちなみにこの企画は何も文の里商店街が最初ではなく、もともとは通天閣のふもとにある「新世界市場」で行ったものが発端らしい。そしてそれが多くのメディアに取り上げられたことで人出が増えたため、別の所でもやってみようということでこの文の里商店街で開催された、という次第だ。文の里商店街が選ばれたのは「激動の阿倍野区の中でぽつんと取り残された商店街を盛り上げよう」という理由によるものなのだそうだ。阿倍野区は大規模な再開発も行われているし、確かに妥当な部分もあるのかもしれない。
なお、ポスター全集はコチラからご覧いただける。我々の知っている「ポスター」とは全く違う概念のポスターが随所に見られ、特に広告業界で働いている方々・広告業界を志望している方々には非常に役立つものになるだろう。よろしければどうぞ。
コロナ禍の文の里商店街の今
そんな奇抜な施策で世の話題をさらった文の里商店街だが、その現状はというと、お客さんこそいるものの、天神橋筋商店街・千林商店街・駒川商店街のような「大阪三大商店街」と比べるとお客さんの数は非常に少なく、決して明るいとは言えないのが現状だ。ここからは、そんな文の里商店街の今の状況についてお送りする。
文の里商店街は、地下鉄谷町線文の里駅を出て西側、阪神高速を抜けたところから始まる。この向かい側に「文の里妙浄通商店街」が位置しており、それと対になる格好だ。
なお、この文の里商店街には地下鉄御堂筋線昭和町駅から向かうこともできる。梅田や天王寺に行くならどちらでも良いが、難波に行けることを考えると御堂筋線やや有利か。
商店街の中へと入っていく。文の里商店街はT字型の商店街となっており、この1丁目だけが他と異なる環境下にあることもあってか、人通りは少なめだ。このエリアに関してはかの有名なポスターが貼ってあることもなく、隔世の感すら漂っている。非常に味のあるアーケードがあるだけにもったいない感じがするが、谷町線の周辺ってこんな寂しいんですかね。駒川中野の駅前はめちゃくちゃ賑わっていましたが・・・。
しかしそんな1番街エリアにも「地下鉄昭和町」「地下鉄文の里駅」といういかにも古めかしい看板が残っている。いかにも古そうな看板だが、その割にその色は御堂筋線・谷町線それぞれの色に合わせて作られるなど、随所に工夫が見られる。サビも目立ってるし、早く取り換えたほうが良いと思うんですが取材班だけでしょうか。
コーナーを抜け、さらに商店街の先へと進んでいく。ここから先、松虫通まで続くエリアが文の里商店街のメインストリートとなっており、東西に大小多数のお店が立ち並ぶ場所となっている。
ここから先のエリアでは随所に面白ポスターを見ることができ、商店街を見て回るだけでも非常におもしろい。
ちなみにこの手のポスターは商店街のアーケードの上から吊るされているものの他に、旗のような形で掲示されているもの、お店の軒先にペタペタと貼り付けられているものがあり、目が回るようだ。お店の人が「買わんでええからポスター見てほしい」と言っていたが、これほどのポスターが貼ってあるあたり、実際に真理を突いているのかもしれない。
・・・しかしポスターが浮くなぁ。ポスターそのものは確かに面白いし、それぞれのお店もそれをちゃんと受け入れているのは百も承知なのだが、やはりそれがそこら中にあるとなると、実際に数多くの商店街を回ってきた取材班としては異常な違和感を感じてしまうのだ。まあこれが「個性」なのは間違いないし、実際に効果も出ているのだからもっとやるべきだとは感じているのだが。感じてはいるのだが・・・
この文の里商店街、全体的な総評としては「お客さんはいるが、他の栄えている商店街に比べると少なめ」といったところだろうか。それなりの人出はあるものの、やはり他に比べると・・・といった印象が拭えない。でも実際問題、お客さん側から言わせるとこれくらいのほうがお買い物しやすいし良いのかもしれないね。それはそれで良いことなのかもしれない。
そんな文の里商店街だが、やはり大資本の侵入は避けられないのか、アーケード内には「ライフ 昭和町駅前店」という広告看板が・・・ 結局こうなるのが落としどころなんですかね。残念ですが。