三田藩の城下町として一定の地位を築き上げた町、兵庫県三田市。今ではまるでそんなことなど無かったかのようにファミリー層が先を競ってマンションや一戸建てを購入するベッドタウンとなってしまったが、明治時代初期には「三田県」なる県も設置されていたことは知られていない(のちに兵庫県に編入)。
そんな三田市の旧市街地には、まるで他の商店街から取り残されてしまったかのように、ある1つのアーケード商店街がポツンと息を潜めるように生き残っているというのだ。今回は、そんな三田市街地の中にある唯一のアーケード商店街、「車瀬橋商店街」及びその前後に位置する「中央町一番街」「中央町二番街」について、その様子をお届けすることとする。
短すぎ&狭すぎアーケード「車瀬橋商店街」
車瀬橋商店街は、兵庫県三田市三田町にある商店街だ。「三田町」というその地名の通り、古くから三田市の一角として一定の地位を占めた商店街となっており、現在もその名残からかアーケードが撤去されることなく整備されている。なお、この商店街の北側で後述する「中央町」と、南側(東側)で「三田本町通りセンター街」と接続している。
商店街の中へと入っていく。この商店街の長さはわずかに40メートルほどしかなく、日本でも有数の短さを誇っている。以前「日本一短いアーケード商店街?」ということで芦屋市の打出商店街をご紹介したが、ここよりも短い印象を受けた。スイマセン。
ものの数十秒で商店街を通り抜けてしまった。やはり40mということもあり、非常に短い。また、商店街が短いこともあってか、お店の数も今ではわずかに2店舗のみが営業を行っているのみで、商店街としては非常に寂しい印象を受ける。とはいえ、お店が少なくなる中でもちゃんとこのアーケードを維持していることは他でもなく非常に立派なこと。拍手を送りたい。
しかし通路狭いな・・・。一応一方通行にはなっているものの、歩行者天国にはなっていないため車も通行することがあり、この狭さもあって非常に危ない。大型車はおろか、近年増えている横幅の広い普通車でもぶつかってしまうのでは?と感じてしまうほどだ。よくこれで今の今まで持ちこたえてきたな、と逆に感心してしまうんですが、そう感じるのも我々だけなんでしょうね。
武庫川の上を通る橋を渡り、中央町側へと向かっていく。この橋は「車瀬橋」と呼ばれており、その名の通り車瀬橋商店街の名前の由来となった橋だ。古い橋のせいか、この橋も幅が広いとはお世辞にも言えない。
昭和のいぶし銀残る街並み「中央町」
車瀬橋を渡ると「中央町二番街」という商店街が見えてくる。この商店街と「中央町一番街」は隣接しており、駅に近い側が中央町一番街、駅から離れた側が中央町二番街となっている。
商店街の中へと回っていこう。先ほど回った「三田駅前商店街」や「三田中町商店街」と比べても明らかに古く、日本らしい趣のある街並みが広がっている。そして相変わらず道幅が狭い(笑)
どうやらこの道幅の狭さと古い街並みには三田市の歴史が関連しているようで、元々三田市の中心がこの中央町・車瀬橋・三田本町・三輪(中央町のさらに先にある商店街)に集約されていたのが影響しているのだそうだ。実際、こちらのサイトにある明治43年の三田市の地図を見れば分かるが、三田市の商業地は先ほど挙げた4つのエリアに集中し、JR(当時は省線)の三田駅周辺にはこれといった建物は存在しなかった。なんでも旧丹波街道がこの道沿いにあったそうで、その道を中心に発展した結果がこのような状況を作り出していたようだ。
しかし、モータリゼーションの進展とJR発足、及び三田市そのもののベッドタウン化が進む中、これらの商店街は駐車場の不足や道幅が狭いこともあいまって衰退の憂き目に遭ってしまい、現在ではお客さんの数も少なくなってしまったとのこと。しかしそうであるが故に今もこのレトロな風景が残っている、とも言うことができる。ケガの功名ですね。
そしてそんな状況下にあることもあってか、商店街の中に三田市指定の景観重要建造物まで残っている次第だ。こちらの建物は「旧いわき呉服店」なる建物で、江戸時代後期に建てられた建物が今も現役で残っているということでこのような重要な存在として扱われている、とのこと。
ちなみにこちらの建物は店舗としても現役で、さすがに呉服店として営業している訳ではないものの、「any many shop」なるパン屋さんとして営業している模様。あいにく私はここで地元のおっちゃんに捕まってしまい(話は面白かったですよ)、お店を訪れる時間を取れませんでした・・・。
中央町をまっすぐ駅へと向けて進んでいく。さすがに駅に近い側ともなるとまだまだ需要も残っているのか、全体的に新しめの建物が多めで、お店も人通りもそれなりに見られるようになる。とはいえ、元々の状況が状況なので限界があるようですが。
中央町一番街の端に到着。三丁目の夕日あたりに出てきそうな明らかに古めの入口が人々を出迎えている。時計が傾いているけど大丈夫なのか?と思ったかもしれないが、時計そのものはちゃんと正常に動いているようだし、これに関しては問題ないのだろう。でもやっぱり三田という街は面白いですね。いかにもニュータウンらしいマンション群もあればレトロ感みなぎる商店街も残っている。関西らしくない光景を見ることができました。