「神戸電鉄を1日観光したい・神戸電鉄に乗りたい、けど運賃が高くて手が出ない・・・」そんな方に朗報の切符が神戸電鉄から期間限定で発売されているのをご存じだろうか。その名も、
「神鉄おもてなしきっぷ」なる切符である。神戸電鉄(一部は神戸市営地下鉄も)全線に乗れる1日乗車券がついているこの切符だが、実はそれだけでなく、沿線にある飲食店や施設で指定された「おもてなしメニュー」が使えるという少々変わったきっぷとなっている。簡単に言うと、電車の1日乗車券に加え、食事や温泉といったアクティビティを楽しめるチケットが付いている、という具合だ。
そしてこの少々変わった形式を採用しているこの切符なのだが、実際に使ってみたところめちゃめちゃお得なきっぷだった。ということで今回は、この「神鉄おもてなしきっぷ」について、その内容やお値段、良い点や悪い点、実際に使ってみてどれほどお得になるのかという点について解説していこうと思う。
「神鉄おもてなしきっぷ」とは
「神鉄おもてなしきっぷ」は、神戸電鉄が発売する企画乗車券の一つだ。先ほども申し上げた通り、鉄道の1日券と「おもてなしメニュー」なる特典の引換券、そしてそれに加え年度によって異なる特典チケットが付いた乗車券となっている。表にまとめるとこのような感じだ。
・「おもてなしメニュー」引き換え券
・その他特典
1.神戸電鉄/(神戸市営地下鉄)1日乗車券
「神鉄おもてなしきっぷ」には「神戸電鉄版」と「神戸市営地下鉄版」の2種類のチケットが発売されており、神戸電鉄版は神戸電鉄の路線内のみ、神戸市営地下鉄版は神戸電鉄の路線に加え、神戸市営地下鉄西神・山手線および海岸線も乗り放題となっている。なお、それぞれのお値段は以下のようになっている。
神戸市営地下鉄版・・・1,800円(子ども設定なし)
2.「おもてなしメニュー」引換券
「神鉄おもてなしきっぷ」には「おもてなしメニュー引換券」なるものが1枚入っている。このチケットを沿線の提携店で渡すことにより、それぞれのお店で用意されている「おもてなしメニュー」を頂ける、という仕組みになっている。ちなみにこのメニューに関しては公式サイトで確認することができ、神戸発祥と言われるそばめしから地酒のボトルに至るまで実に多種多様な品が用意されている。詳しい価格は不明だが、公式サイトを見るにおそらく700円相当の品が出るように設定されているようだ。
また、このおもてなしメニューは食事以外にも利用することができ、リニューアルが話題となった「ネスタリゾート神戸」や温浴施設等でも使うことができる。個々の予定に合わせて使うのが良いだろう。
3.その他特典
こちらに関しては発売される年によって異なるのだが、年によっては少々変わった特典が付いてくることがある。2021年度に関しては、国営明石海峡公園神戸地区「あいな里山公園」にて記念品がもらえる引換券が付いていた。この「あいな里山公園」は、「るろうに剣心 最終章 The Beginning」のロケ地として使われた場所で、「神鉄おもてなしきっぷ」公式パンフレットでもその存在がアピールされている。
また過去には岡場駅前のショッピングモール「エコール・リラ」で使える割引クーポンなんかが配布された年もあり、ここに関しては年のお楽しみ、といったところなのかもしれない。
なお、あくまで「引換券」であって、入園料を定価で支払う必要があるのには要注意だ。
「神鉄おもてなしきっぷ」の良い点
さて、ここまで「神鉄おもてなしきっぷ」の概要について紹介してきたが、ここからはこのきっぷの良い点についてご紹介する。良い点としては、以下の2つが挙げられる。
・「おもてなしメニュー」が非常に良い
1.(おもてなしメニューを考えると)きっぷが非常に安い
先ほども書いたが、「神鉄おもてなしきっぷ」の値段は以下のとおりだ。
神戸市営地下鉄版・・・1,800円(子ども設定なし)
一見少々お高めに見えるこのきっぷだが、実際はこの値段に「おもてなしメニュー」の値段(700円相当)が含まれているため、実際の1日券のお値段は神鉄版で500円、地下鉄版で1,100円。この値段は、神戸電鉄や神戸市営地下鉄の運賃を考えると相当お値打ちだ。3回乗り降りするならほぼ確実に得になるし、三宮~有馬温泉(片道680円・神戸市営地下鉄版利用)や三田~有馬温泉(片道500円・神戸電鉄版利用)といった主要区間の利用であれば往復でも十分元が取れてしまう。どの区間でも100%元が取れるとは言えないが、ぜひ乗り換え案内等で片道運賃を検索した上で比較検討するべきだ。
2.「おもてなしメニュー」が非常に良い
これは取材班の個人的な経験に過ぎないのだが、「神鉄おもてなしきっぷ」を買うともらえる「おもてなしメニュー」、無料だからと正直見くびっていたのだが、これが非常に良かった。
取材班が訪問したのは、神戸電鉄湊川駅から5分ほど歩いたところにある「インド亭 新開地店」というところ。どうせタダだし・・・と思っていたのだが、実際には日本人向けにテイスティングされた非常にコクのあるカレーとどでかいナンが提供され、夜ご飯としても非常に満足のいく美味しさと分量だった。このきっぷ、オススメです。
「神鉄おもてなしきっぷ」の残念な点
「神鉄おもてなしきっぷ」の残念な点としては、以下の3つが挙げられる。
・神戸高速線には乗れない
・期間限定である(いつも売っているわけではない)
1.おもてなしメニューの提供店が偏っている
「おもてなしメニュー」を提供する店舗は全33店舗。しかしこのうち20店舗が神戸市内に集中してしまっている。三田方面や粟生線方面にもお店はあるものの、粟生線方面は数こそ多いがちゃんとしたご飯を食べられるお店が少ないという特徴があり、三田市内に至ってはそもそもお店が1店舗しかない。また、多くの観光客が訪れると思われる有馬温泉周辺の協力店が2店舗しかないのも正直微妙だと言わざるを得ない。お店の数は十分なんだから、もうちょっと散らしてほしかった・・・と感じてしまう。わざわざ昼ご飯を食べるためだけに湊川まで戻るのも面倒だしね。
2.神戸高速線に乗れない
「神鉄おもてなしきっぷ」では、残念ながら神戸高速鉄道には乗車することができない。しかも、神戸電鉄が直通する新開地~湊川間を含めて、だ。そのため、新開地や高速神戸へ行く場合は別途片道130円、三宮へ行く場合は別途片道150円の支出が必要となる。「おもてなしメニュー」の提供店が新開地エリアにも多く所在していることを考えると、これは痛い出費だろう。せめて新開地だけでも・・・と思わずにはいられないのだが、厳しいでしょうか。
3.期間限定である
「神鉄おもてなしきっぷ」の販売期間は例年5月1日~11月30日となっており、冬場には発売されない。そのため、日時によってきっぷが使えるかどうかが左右されるのもこのきっぷの難点だといえる。まあ冬場に神鉄観光するのもんかなかキツいし(冬の神鉄沿線は山がちなこともあって冷え込む)、その点ではある意味妥当なのかもしれない。
2022年度分は2022年7月16日~2023年1月15日まで発売しています。
まとめ この内容でこの価格はお得過ぎる
ここまで何やかんや言ってきたが、このきっぷは非常に便利かつ安く使える非常に実用性のある切符だ。神戸高速線が使えなかったり、「おもてなしメニュー」を使えるお店が偏っていたりと欠点もあるものの、やはり1,200円で食事付き、1日乗車券付きという特徴は他にないものであり、十分使う価値のあるものだと確信している。みなさんもぜひ神戸電鉄沿線におでかけして「おもてなし」されて見ればいかがだろうか。
山陽電鉄、神戸電鉄沿線アルバム 昭和~平成 /アルファベ-タブックス/辻良樹