六甲山と大阪湾に挟まれた港町・神戸。その歴史は大輪田泊や神戸港など「海」の側面から語られることが多いが、実際の神戸市は有馬温泉や西神ニュータウンなどの「山」の部分から成るエリアも非常に多くあり、このエリアに関しても多くの歴史を抱えていることはもう言うまでもないだろう。西神ニュータウンに関してはコチラもご覧いただくとより理解しやすくなるかもしれない。
そんな「山側」の神戸を移動するのに欠かせないのが、神戸の下町・新開地と六甲山を越えた北側の新興住宅地や有馬温泉、三田市内のニュータウンといった郊外部を結ぶ元・準大手私鉄「神戸電鉄」の沿線だ。近年では粟生線が廃線になるだとか、谷上駅から連絡する北神急行が神戸市営地下鉄の一部分になり利便性が向上したとかで話題をかっさらっている印象を受けるが、では乗客は大きく増えたかというと決してそうでもないあたり、この路線の苦しい現状がうかがえる。
さて、今回やってきたのは神戸電鉄は長田駅である。新開地からは2駅、神戸市営地下鉄西神・山手線の湊川駅からは1駅とすぐ近くにあるのにも関わらず、寂しさ漂う簡素な駅舎となんだか微妙な風景が出迎えている。阪神・淡路大震災後に大がかりな再開発が行われたJR新長田駅周辺とは大きな違いだ。ちなみに新開地までは2駅で290円だそうです。いや、高すぎるわ。
この長田駅から歩いて7~8分ほど歩いたところに、ある異様な雰囲気を持つショッピングセンターがあるという情報を読者の方からいただき、今回取材班がやってきたという次第だ。今回は、神戸市長田区房王寺町に位置するショッピングセンター、「房王寺ショッピングセンター」の様子をお届けしようと思う。
商店街なのに「ショッピングセンター」 房王寺ショッピングセンター
房王寺ショッピングセンターは、神戸市長田区房王寺町に位置するアーケード商店街だ。このアーケード商店街の向かいにある「市営房王寺住宅」に付属した形で作られた商店街となっており、おそらく近隣住民からのお買い物客を期待したものなのだと思われるが、現在では寿司屋とNPO法人の施設、そして散髪店がそれおれ1軒ずつ残るのみで、お買い物客は皆無。非常に残念な状況を呈している。
アーケードの中へと入っていく。アーケードは100mほどとごくごく短く、ショッピングセンターなどという大仰な名前がついているものの、どちらかというと「地元住民のためのお買い物スペース」といった様相だ。さすがにイオンモールとはとは事情が違うよね。ちなみになぜショッピングセンターという名前がついているのか尋ねてみたが、「よくわからない」との答えが返ってきた(´・ω・`)
商店街の横には「房王寺センター」と小さいながらもはっきりした字で書かれている。字体こそ古さを感じさせるが、ペンキの色は今も全く色あせておらず、ちゃんと管理されている様子がうかがえる。このあたりはやはり新興住宅地の中のショッピングセンター、じゃない、商店街といったところなのだろう。
商店街の逆側から入口を望む。既に開業から数十年経っているはずのこの房王寺ショッピングセンターだが、不思議なことにあまり古さを感じない。やはりここは本当に「ショッピングセンター」なのかもしれませんね。知らんけど。神戸には商店街なのかどうなのかわからなくなってしまった商店街もあるが、少々こことは状況が異なるようである。
<詳しくはコチラ>
商店街のすぐ裏になぜか長すぎる階段が・・・
先ほどあげた写真をもう一度見てほしい。
こちらの写真の奥を見ると、建物があるのが分かるだろう。これを見ると、一見行き止まりになっており、回遊性の悪い造りをしているのかと勘違いしてしまう。
だが、実際には建物の横に隣接する形で階段が設置されており、商店街の反対側へと抜けるにはこの階段を使うという形を取っている。少々変わった形だな。坂の多い神戸市であるが、この形式を取っているのは初めて見た。長田の山奥(山奥というと言いすぎな部分もあるが)ともなるとこうなってしまうのだろう。ある意味面白い光景ではあるが、住民からしたら大変だろうな。
それだけでなくこの階段、房王寺ショッピングセンターを抜けて階段を上がるだけならまだ良いのだが、階段を上がったのちにもう一度階段を下らないと向かい側へと抜けていけないという、非常にややこしい構造をしている。しかもこの階段だが、30段ほどの階段を上った後に100段以上の階段を下らないと向かい側に移っていけないという鬼のような仕様となってしまっている。昔ならまだ良かったのかもしれないが、高齢化の進んだ今ではもはやただの苦行でしかないだろう。もうちょっとうまく計画できなかったんでしょうかね。
ちなみに階段の上から見る神戸の街並みは非常にキレイでしたよ。電線が無ければもっとキレイだったが、まあここは仕方がないだろう。それにしても山の斜面にへばりつくようにして家々が立ち並んでいるあたり、神戸という街がいかに平地の少ない街なのかということを身を持って実感させられる。神戸の人口減少が叫ばれて久しいが、やっぱりここは都会ですよね。