兵庫県第二の都市・姫路市。その名物といえば何と言っても「姫路城」だろう。日本を代表する城であり、世界遺産にも指定されているこの城には老若男女問わず多くの人々で常に賑わいを見せており、その人の流れはいつになっても止まりそうにない。
そんな姫路城とともに訪れてほしいのが、姫路城の向かい側・お城本町地区に位置する「イーグレひめじ」なる施設。屋上に姫路城を臨む展望台が設置されており、非常に美しい姫路城の姿を見られるのだが、意外に知られていないのか人も少なめ。静かな環境の中で姫路城の写真を撮影できるなかなか便利なスポットとなっている。
そしてこのイーグレひめじ、その裏にはなかなかに深い背景があるのだとか・・・。今回は、そんな様々な事情の入った再開発ビル「イーグレひめじ」について、その背景を見ていくこととしよう。
姫路城の全景を見るなら「イーグレひめじ」一択です
イーグレひめじは、兵庫県姫路市に位置する再開発ビル。「お城本町地区市街地再開発計画」の一環として2001(平成13)年7月に開業した。イーグレという名称は姫路城の別称「白鷺城」を英語に訳したもの Egret(=白鷺) から由来している。波打った特徴的な建物も姫路城の石垣に着想を得ており、名実共に「姫路城」を意識した構成となっている。
「姫路城」という名称が各地に使われている通り、建物の屋上に展望庭園が設置されており、道を挟んで向かい側に位置する姫路城の様子を一望することができる。なお、屋上庭園の利用は午後6時までとなるので要注意。
屋上には姫路城を一望できるとともに、姫路城に関する掲示板も設置されており、実際に姫路城に向かった際により理解を深めることができる。
なお、かつては館内に温泉やレストランなんかもあったようだが、こちらは残念ながら閉鎖されている。今後の再開を祈りたい限りです。
再開発の核店舗は「イトーヨーカドー」になる予定だった!?
現在は公共施設によってほぼ全てのテナントが占められているこのイーグレひめじ。しかし、元々は商業施設がメインとなる予定だったようで、なんと「イトーヨーカドー」が核店舗として出店を予定していたのだというから驚きでしかない。
元々お城本町地区は「お城マート」と呼ばれる市場のような場所で、(JR姫路駅周辺にお客を取られ店舗数こそ減っていたものの)その性質上商業関係の店舗が非常に多く、再開発後も商業施設を中心とした店舗構成が計画されていた。
とはいえ、元々の地権者だけでは地上6階建てという建物全てが埋まらないのは確実。ということで、再開発組合側は大手小売チェーンに再開発後の核店舗として出店を要請することとなった。1980年ごろのことだった。
どこかが出店してくれるだろう・・・と思い込んでいた再開発組合側だったが、出店を検討すると表明したのはなんとイトーヨーカドーただ1社だけ。しかも当時は関西にイトーヨーカドーが無かった(関西進出は1986年)こともあり、話し合いは難航。結果的に条件の折り合いがつかず交渉は決裂してしまった。
これを受け、再開発組合は設計の見直しに着手。文化庁から「文化財保護法にのっとったビルを建設するように(姫路城に近く特別史跡地に認定されているため)」という指摘を受け、調整に時間がかかる中でバブルが崩壊。テナント誘致に見通しが立たなくなる中、西松建設が商業計画を提案。これにより一揆に話が進み、最終的に2001年開業、現在に至っている。
なお、西松建設が提案したのは「温浴施設やテーマ型レストランを中心とした『健康とうるおい』のある施設」だった。しかし現在は先述したように温浴施設もレストランも閉店・・・。当初の計画とはやや違った姿を見せる施設となっている。ここからは、そんなイーグレひめじの内部について詳しく見ていくこととしよう。
公共施設メイン、商業施設はかなり少なめ・・・
イーグレひめじの歴史について触れたところで、その内部について触れていくこととする。
2023年訪問時の中の様子はこんな感じ。全体的に公共施設がメインとなっており、商業フロアは一部低層階に設置されているのみで、ややアンバランスな印象も拭えない。かつては一大商業地域であったこのお城本町エリアだが、再開発の際に多くの事業者が転出してしまったようだ。
中の様子はこんな感じ。開業から既に20年以上経過している施設だが、全体的に小綺麗な雰囲気が漂っている。1階には小さいながら噴水のようなものも設置されており、バブルっぽい面影も少しではあるが感じることができた。
とはいえ、商業施設というよりは公益施設としての印象が強いのは拭えないようで、館内にも数多くの展示や市民向け施設がズラズラと並んでいた。これもこれでありなのでしょうが、もうちょっと何かうまくやる方法は無かったのでしょうか。姫路城もすぐ近くにありますし・・・。