兵庫県の県都・神戸市。震災という災禍を乗り越えたこの街には三宮地区の「KOBE三宮センター街」をはじめ今も数多くのアーケード商店街が立地しており、その多くが令和の世となった今も栄え続けている。一部これやこれのように、少々マズい状況にあるアーケード商店街もあるにはありますが。
そんな神戸市内のアーケード商店街の中で先陣を切ったのは、今や日本を代表するアーケード商店街の一つとなった、三宮センター街や元町商店街ではなく、神戸市兵庫区にある「御旅筋商店街」なる商店街なのだそうだ。そしてその御旅筋商店街、現在非常にマズい状況下にあるらしい。ということで今回は、神戸市兵庫区に位置する「御旅筋商店街」について、その歴史と現状について探っていくとしよう。
西日本初のアーケード「御旅筋商店街」の深い歴史
御旅筋商店街は、兵庫県神戸市兵庫区に位置する商店街だ。現在では様々な事情から(後述)「商店街」というべきなのかどうかも微妙な存在になってしまっているが、現在もかつての栄華が多く残っており、その哀愁の感じられる場所となっている。
「御旅」という名前はこの商店街の北端にある「生田神社 御旅所」という神社の分社(説明違ってたらごめんなさい)に由来する。そして、この場所と当時JRと山陽電車の接続駅として一大ターミナルとなっていたJR兵庫駅とを結ぶべく整備されたのがこの御旅筋商店街、という形になる。いかにも昔の商店街らしいですね。
現在では「御旅」という名前が一般名詞となっており、「精選版 日本国語大辞典」によると
祭礼の時、神輿が御旅所(注:御旅所=神社の祭礼のとき、本社より出た神輿が仮に留まるところ)に鎮座すること。また、鎮座する場所。
という説明がなされているようだ。案外メジャーな名前なんですね。
この御旅筋商店街、かつての繁栄には目を見張るものがあり、戦前には300以上の店舗がひしめき合っていたほか、昭和に入ってからは西日本で初めてとなる天幕式のアーケードが完成。途中、太平洋戦争などの衰退期もあったものの、1960年代まではこの栄華を受け続けてきた。
しかし、先ほどの写真を見れば分かる通り、現在では御旅筋商店街にアーケード商店街は残っていない。何があったのだろうか。
御旅筋商店街の風向きが変わったのは1968年のこと。神戸高速鉄道の開通により、兵庫駅を乗り降りする人が大きく減ってしまったのだ。さらに1971年には神戸市電が廃止、さらなる空洞化が進んでしまった。
極めつけとなったのが、1995年におきた阪神・淡路大震災。これにより、御旅筋商店街は大きな被害を負ったほか、それに追い打ちがかかるように買い物客の減少やお店の廃業が続出。2015年には御旅筋商店街の南北を結ぶゲートが取り壊され、その翌2016年には御旅筋商店街の運営を行ってきた商店会の連合が解散。今のような状態に至る。最近では某ウイルスの影響でお店を閉める人もいる(商店主の人いわく)そうで、出口の見えない負のループに入ってしまっているのが現状のようだ。
御旅筋商店街、その哀しい今・・・
御旅筋商店街の歴史について軽くおさらいしたところで、その現状について書いていくとしょう。御旅筋商店街はJR兵庫駅北口を抜けてやや東側に移動した場所に位置しており、住所でいうと「兵庫県神戸市兵庫区羽坂通」というエリアがここにあたる。Googleマップ上の「御旅筋」からは1本西に行った場所になるので注意が必要だ
さて、早速御旅筋商店街の中へと入っていこう・・・と思いきや、いきなり「幸福の科学」がお出迎え。実に立派な建物だ。この建物は「幸福の科学 神戸西支部精舎」という場所にあたるそうだ。写真を撮っていたら「中に入ってみます?」と声をかけられてしまった。すいません。さすがにそれはお断りします・・・。
気を取り直して商店街の中へと入っていこう。ポツポツとお店は営業を続けているものの、どちらかというと住宅のほうが目立っており、全体的にどんよりした印象を受ける。お店もあるものの、どちらかというと脇役となっているのかもしれない。
現在の御旅筋商店街は、こまごましたお店が多くあるというよりは規模の大きなお店がいくつかあるという部分があり、店舗が少なくなり寂しくなったところを大きめの店舗が埋めるという状態に至っているようだ。実際、かつてこの近くにあった「御旅センター市場」という市場も現在は「ジョイエール御旅」というスーパーマーケットになっているし、この流れは止まらないだろう。かつての商店街連合会の方々も「人通りが少ない、空き地が多い、高齢化」の3つを課題として挙げていたようで、これはこれで一種の解決策として有用ではある。
とはいえ、この御旅筋商店街に人出があるのかというと、正直全くない。ポツポツと通る人はいるものの、皆ただ通り過ぎるだけ。おそらく近隣にお住まいの方々なのだろう。神戸ハーバーランドまで1駅というのも大きいが、これじゃあね・・・。まあ当の神戸ハーバーランド自身も良い状況下にあるとはとても言えないんですけれども。
御旅筋商店街に残る、商店街らしい街灯の数々。もはやこれくらいしか、商店街の面影を残すものはないのだろうか。非常に悲しくなる。
商店街を抜け、生田神社御旅所へとやってきた。正式には「生田神社 兵庫宮 御旅所」という名前がついているそうで、天照大御神が祀られているとのこと。生田神社公式サイトには「重要な場所」と書かれているが、訪問時は人っ子ひとり見当たらず。寂しいかな。
生田神社御旅所側から御旅筋商店街を見つめる。かつて多くの人でにぎわったこの商店街も、今や人のいない寂しい街並みへと変貌してしまった。都心・三宮再整備等、多くの再開発計画を抱える神戸市は、この場所をどう変えていくのか。それとも、このまま放置してしまうのだろうか。良い情報を祈るばかりだ。