いまや全国に展開されているといっても過言ではない大型ショッピングモール。日本におけるその歴史は沖縄県の「プラザハウスショッピングセンター」から始まること、既に数十年。当時の方々の先見の明にはいつも驚かされてしまいます。


マイカル本牧
そんな大型ショッピングモールの中でも、「超大型ショッピングモール」の先駆的存在といえるのが「マイカルタウン」。ところが、今やマイカルという名前そのものが消えてしまっていることもあり、その詳細については知らない方も多くいるのではないのでしょうか。今回は、そんな大型ショッピングセンターの嚆矢「マイカルタウン」について、その詳細を見ていくことにします。
マイカルタウンとは?

マイカル小樽
マイカルタウンは、かつて存在した企業・株式会社マイカルが開発・運営を行っていた大規模ショッピングモールです。マイカルの「いつも若々しく快適で健康な生活」という理念・理想を体現するショッピングセンターとして、1989(平成元)年に「マイカル本牧」を開業させたのが始まりとなっています。

マイカル茨木
マイカルはその後も自身の理想・理念に従って全国に多数のマイカルタウンを建設。しかし、バブル後の不況のあおりを受けたことや、過剰な投資が仇となり経営が悪化。結果、2001(平成13)年に民事再生法を申請、現在はイオンの傘下となり、マイカルという名前は無くなっています。

明石ビブレ(マイカル明石の一部)
倒産という憂き目に遭ったマイカルですが、我が世の春を謳歌する大規模小売業者・イオンからは「マイカルは最大のライバル」と言われていたそうで、当時のマイカルにはそれだけの魅力があったのは確か。そんなマイカルが展開する大型店舗・マイカルタウンにはどのような特徴があったのでしょうか。

圧巻の広さを誇るマイカル小樽
マイカルタウンを他の施設と比較した際、大きく異なるのは以下の2点に集約されています。
・広い。とにかく広い。
・モノ消費だけではなく、コト消費にも重点を置いている。
1に関しては後の店舗一覧を見て頂ければよく分かるかと。とにかくいろいろなものを一つの施設に入れているため、とにかくアホみたいに大きい施設が多い。何千坪というスペースを使うのは当たり前、複数の建物を建てることも多く、最初に完成したマイカル本牧に至っては9棟もの建物があったそう。その分かかった費用も大きかったそうで、小樽市の「マイカル小樽」に至っては600億円という大金が使われたのだとか。恐ろしい規模です。

マイカル小樽
2はコト消費の広まった現在では少々分かりにくいかもしれません。
当時の小売業はとにかく「モノを売る場所」としての意識が強く、一部その先を考える企業や施設も完成してはいたものの、小売業全体として「モノを所有することによる価値」が重視されていた時代でした。
その考えを打破するかのように、当時のマイカルは「物事を体験する価値」にフォーカスしました。その例として、映画館「ワーナー・マイカル・シネマズ」や総合娯楽施設「ダイナレックス」、さらにはフィットネスクラブや劇場、施設によっては博物館まで整備。単にモノを売る場所としての施設ではなく、様々な体験のできる体感型施設としてショッピングモールを整備したという歴史があります。今でこそ「コト消費」という言葉がよく話題に挙げられるようになりましたが、20世紀の時点でこれに気付いていたとは、頭が上がりません。

マイカル本牧映画館跡
そんな独自の特徴を持つマイカルタウンですが、マイカルタウンはどこに展開されていたのでしょうか。ここからは、マイカルタウンの店舗一覧を簡単な紹介とともに見ていこうと思います。
マイカルタウンの店舗一覧
マイカルタウンが展開されていたのは以下の7ヶ所。
・マイカル本牧(神奈川県横浜市)
・マイカル桑名(三重県桑名市)
・マイカル明石(兵庫県明石市)
・マイカル近江八幡(滋賀県近江八幡市)
・マイカル小樽(北海道小樽市)
・マイカル茨木(大阪府茨木市)
・マイカル大連(中国・大連市)
近畿地方に多く集まっており、四国や九州には展開されていないのが特徴です。意外や意外、海外進出も行っており、中華人民共和国にもお店があったというのは驚きですね。ここからは、1件ずつその内容を詳しく見ていくことにしましょう。
マイカル本牧
1989年・神奈川県横浜市に開業。マイカルタウンの1号店で、現在も「イオン本牧店」として一部が営業中です。開業当時に比べると規模はだいぶ小さくなっており、イオンとして営業しているのは2棟のみとなっています。しかし、マイカル時代に考えられた「スペイン植民地様式風」という独特の風景は現在もかなりの部分が残っており、現在も異国情緒あふれる景色が広がっています。
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マイカル桑名
1995年・三重県桑名市に開業。現在は「イオンモール桑名」として営業中。マイカル時代の面影が濃く残っている施設の一つで、現在もマイカル時代の噴水やマイカルらしい緑色をモチーフとした看板が残るなど、当時の面影を感じたい方にはオススメの施設です。
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マイカル明石
1997年・兵庫県明石市に開業。現在は「イオン明石ショッピングセンター」として営業中。マイカルタウンの中でビブレが残る唯一の施設となっており、ビブレそのものが全国で2店舗しかないことから、全国でもかなり貴重な存在となっています。また、所在する明石市が子ども向けの施策を多数行っている関係か、いつ行っても子どもたちで賑わいを見せているのが面白い点かもしれません。
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マイカル近江八幡

画像はWikipediaより抜粋
1991年(マイカルタウンとなったのは1999年)・滋賀県近江八幡市に開業。マイカルタウンの中では小規模な施設ではあるが、マイカルらしい風景が数多く残っているという評判。駅前にある点、東海道本線の近江八幡駅の目の前にあるという点(しかも新快速も止まる)で比較的アクセスしやすい場所にあるので、どこかへ行く用事のついでに行くこともできそうですね(笑)
マイカル小樽
1999年・北海道小樽市に開業。現在は「ウイングベイ小樽」という商業施設として営業中。数あるマイカルタウンの中でも最大規模の施設で、とにかく東西に長い(約1km)あるのが特徴です。マイカルが破産した最大の要因はこのマイカル小樽の建設にあると言われており、現在も実質的な破綻状態で営業を続けているのだとか。今後が心配な施設です。
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マイカル茨木
2001年・大阪府茨木市に開業。現在は「イオンモール茨木」として営業中。マイカルタウンの中で最後に開業した施設となっており、またイオンになってから相当量のリニューアルが行われたからか、マイカル色は薄め。もはや普通のイオンモールとほとんど変わらない状態となっているのが現状です。
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マイカル大連(大连麦凯乐商场)

画像はコチラより抜粋
1998年・中国/大連市に開業。現在は「大连麦凯乐商场」として営業中。マイカルタウン唯一の海外店舗となっており、現在もマイカルの名がつく唯一の店舗となっています。通常マイカルは「MYCAL」の文字を使用しているのですが、この施設は「MYKAL」の文字を使用。海外の事情は分かりかねますが、何か特別な事情があったのでしょうか・・・
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はマイカルがかつて全国に展開していた業態「マイカルタウン」について特集しました。全国に7店舗を展開しており、現在もその全てが営業を続けているマイカルタウン。その全てを訪問することは難しいかもしれませんが、ぜひ一度お近くのマイカルタウンまで足を運んでみてはいかがでしょうか。
再生したる! ドキュメント「マイカル復活」1500日 /ビジネス社/加藤鉱