日本全国に乱立するニュータウンの先駆け、千里ニュータウン。かつてはまちびらきから年数が経過したこともあり、高齢化が酷く叫ばれた時期もあったこの千里ニュータウンだが、近年では再開発が進められたこと、北大阪急行・御堂筋線を利用して梅田や難波、天王寺に直通で行けるということもあり、近年ではファミリーを中心に若年層が多数流入、新たな形のニュータウンとしてその姿を変えながら今も生き続けている。人の流出が続く神戸市北区なんかとは大違いだ。
そんな千里ニュータウンの中心といえば、北大阪急行電鉄・大阪モノレールの千里中央駅である。梅田・難波・天王寺といった大阪の主要な繁華街や伊丹空港なんかにも直通で行けることもあり、この千里中央という土地の人気は相当なものがあるようで、休日ともなれば上の写真のように多くの人々が列車を乗り降りする光景を見ることができる。
そんなにぎわいを見せる千里中央の中でただ1軒、繁栄の中から取り残されるように寂しい姿を晒している商業施設があるというのだ。今回は、そんな千里中央駅前に取り残された、閉鎖された施設「千里セルシー」について、その概要をお届けする。
千里セルシーとは
千里セルシーは、大阪府豊中市、千里中央駅前にある商業施設だ。ローマのコロッセオを模した造りになっており、ショッピングモールだけでなく、映画館やボウリング場、さらには館内にミニ中華街を設置していた時期もあるなど、単なる一商業施設に留まらない先進的な施設として各方面かた注目を集めた。実際、アイドルや歌手によるコンサートもこの千里セルシーで行われていたことからも、そのスゴさが分かるだろう。
しかし、この千里セルシー、開業が1972年と千里地区の中では古く、建物の老朽化が進んだことや耐震性能に問題があったことから閉館を発表。2019年5月31日をもってその歴史に幕を閉ざし、現在ではいわゆる「廃墟」となっている。
千里セルシー 2021年訪問時の様子
2019年5月31日をもって閉鎖となったこの千里セルシーだが、現在も一部のテナントに関しては営業を続けているようだ。閉館からしばらく建った今、この千里セルシーはどうなっているのか。当取材班は実際に現地を訪問し、取材してきた。
千里セルシーがあるのは北大阪急行電鉄・大阪モノレール「千里中央」駅を出てすぐのところ。先ほどあげた2つの路線とは地下街やペデストリアンデッキを挟んで直結しており、千里中央を囲む商業施設群の一角をなしている。そしてご多分に漏れず、千里セルシーの向かい側にも「せんちゅうパル」という商業施設が立地しており(こちらは現在も営業中)、格差を感じてしまう。
千里セルシーは地上6階、地下1階建てとなっており、その複雑な構造もあいまって特徴的な景色を映し出している。1972年開業とは思えないバブリー具合だが、当時はこの手の建物が流行っていたのでしょうか・・・。
2階からセルシーの様子を写す。写真の真ん中にあるこの広場は「セルシー広場」と呼ばれ、かつては多くのアイドルやアーティストが中央の緑色のステージでライブを行っていたものだが、現在では周りにバリケードがこれでもかというほど張られ、近づくことすらできなかった。諸行無常ですね。
北側から千里セルシーを見る。耐震面に大きな不安がある(震度6強から震度7程度の揺れで倒壊するという診断を受けた)ということで閉鎖されたこの千里セルシーだが、やはり実にご立派な場所である。もったいないなぁ・・・。
地下へと向かおう。千里セルシーの地下は「セルシー地下街」という名称がついており、こちらに関しては現在も中に入ることができる。入場不可となりました。
(2021年訪問時の様子です)セルシーの地下街はこんな状況だった。こちらもすべての店舗が移転・閉店したのか、通行人もほとんどなく、非常に寂しい状況が漂っている。一応ここは千里阪急ホテルの抜け道にもなっているのだが、わざわざこの中を通ってホテルへ向かおうという人もいないのか、ニュータウンとは思えない静かな時間が流れていた。ある意味落ち着いてて良い場所ですね。
なんだか悲しげな表情をしているこの千里セルシーだが、その中でも地下1階に位置する「パチンコ しんばし」は今も元気に営業を続けていた 閉店しました。ニュータウンの中心となるビルにパチンコ屋があるというのも変な話だが、需要があるから供給があるというものなのだろう。小綺麗なビルにパチンコ屋が堂々と営業しているというのは、武蔵小杉の「ららシティ」や出屋敷リベル、徳島駅前アミコなんかと似たところがありますね(笑)
千里セルシーの再開発がなかなか進まない件
商業施設としての営業を終え、いまや朽ち果てる巨大建造物となったこの千里セルシーだが、この千里セルシーには再開発計画があるという。
これについては、阪急阪神ホールディンクス2020年度決算説明会資料でその内容を見ることができる。
これによると、
・千里阪急ホテルは2025年度末ごろに営業を終了
・千里中央駅前地区(千里阪急百貨店・千里セルシー等)において再整備計画を検討
という記載がなされており、今後の再開発を行うことが示唆されている。
しかし現状を見るに、この千里セルシーは隣にある千里阪急と同時に再開発の上で新しい再開発ビルを建てることを計画しているらしく、千里阪急そのものが営業を続けていることからもこの再開発は当分先のことになりそうだ。千里阪急も既に50年選手だし(1970年開業)、もうそろそろ抜本的な開発が必要な状態にはあるのだろうが、阪急阪神そのものも鉄道利用客の減少に悩まされているのは想像に難くないだろうし、なかなか厳しいんでしょうね。
とはいえ、2015年にはこの千里中央の2駅となり、万博記念公園に「ららぽーとEXPOCITY」がオープンし、商業面での競争が激しくなっているのも確かだ。かつての千里ニュータウンの象徴、千里セルシーは今後どう変わっていくのか。その将来が楽しみでもあり、不安でもある。
新しき故郷(ふるさと) 千里ニュ-タウンの40年 /エヌジ-エス/山地英雄